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携帯電話型端末におけるカメラ機能の進化について考えてみた! |
このトップ画像は、約10年前に筆者が「iPhone 3G」で最初に撮った写真の1つです。当時ガラケーと呼ばれていた日本のフィーチャーフォン(従来型携帯電話)のカメラの進化は素晴らしくひたすら写りの良さを競い合っていた頃、iPhoneは若干見劣りするカメラ性能ではありましたが、サードパーティーによるさまざまなエフェクトを掛けられるアプリによって遊びの幅が生まれ、モノクロ写真やミニチュア写真のようなエフェクトを掛けては楽しんでいたのを覚えています。
時は流れ、今やスマートフォン(スマホ)のカメラ機能の充実ぶりと高性能化は人々の想像を超えるレベルにまで発達し、プロも驚く画質と性能を手に入れるまでになりました。人々は自撮り(セルフィー)を楽しみ、デザートの写真をInstagramに載せ、日々の生活を彩るアイテムとしてスマホのカメラ機能を思う存分楽しんでいます。
人々にとってスマホのカメラ機能とはどういったものなのでしょうか。またスマホメーカーにとってのカメラ機能の立ち位置とはどういったものなのでしょうか。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する「Arcaic Singularity」。今回はフィーチャーフォンやスマホのカメラ機能の進化の歴史からこれからのスマホカメラの在り方などを考察します。
■携帯電話とカメラ機能の歴史
はじめに携帯電話型端末におけるカメラの歴史を少しおさらいしてみましょう。世界で初めてカメラ機能が搭載された携帯電話型端末は当時のDDIポケットより1999年に発売された京セラ製端末「VP-210」とされていますが、PHS端末であったことやカメラがテレビ電話用で内側に付いていたことから「写真を撮る」という目的ではあまり注目されませんでした。
本格的に携帯電話型端末のカメラ機能が注目を浴びたのは当時のJ-Phoneより2000年に発売されたシャープ製端末「J-SH04」です。J-SH04の成功によって「携帯電話で写真を撮ってメールで送る」といいう文化が生まれ、「写真メール」がさらに略され「写メ」という言葉まで生まれました。未だにLINEなどへ写真を載せる際も「写メ送るよ」なんて表現を使っている人もいるのではないでしょうか。
その後フィーチャーフォンは機能の成熟や多様化とともにカメラ機能が大きく進化していきます。まさにガラパゴスケータイと呼ばれるに相応しい恐竜的進化です。その先陣を切っていたとも言えるメーカーはシャープやカシオであり、当時両企業は競い合うようにカメラ機能を充実させていきました。
■そして時代は一巡する
そして時代はiPhoneの登場によって「リセット」されます。冒頭でも書いたようにiPhoneのカメラ機能は日本の携帯電話と比べると決して性能が良いとは言い難いものでしたが、サードパーティが自由にカメラを利用したアプリを作れたことからさまざまなエフェクトアプリや高機能化アプリが登場し、カメラをただ「美しく撮る」ものから「楽しく撮る」ものへと変革させたのです。この変革は思いのほか大きなものでした。
当時はスマホと言えばまだiPhoneしかほぼ選択肢がなく(Windows Mobile搭載端末などはPHSを中心にいくつかあったが認知度も人気も低かった)、また後追いとして登場したAndroidスマホはまだまだOSの性能やハードウェア的な機能も稚拙でカメラ機能を楽しむといった段階になく、その成熟には少なくとも2~3年掛かっていたように思われます。
そんなスマホも2013~2014年頃には性能的な成熟期に入り、人々が普段使う分には何ら不満のないレベルのものがエントリーモデルにまで浸透するようになりました。性能が安定し端末デザインや価格までがコモディティ化してしまうと、あとはメーカー同士の淘汰の時代です。「どれを買っても同じ」と揶揄される時代に如何に生き残るのか、どう差別化するのか。その分かりやすい答えがカメラ機能だったのです。
そうして携帯型端末は、スマホという新しい媒体においてカメラ機能の恐竜的進化を再び始めました。
■自撮り文化によって台頭する中国・台湾企業
スマホにおけるカメラ機能の進化を後押ししたのは自撮り文化の開花です。日本ではセルフィーと言っても女性が楽しむ程度という認識が未だに強くありますが、中国や台湾、そのほか東南アジアなどアジア圏の多くの国では老若男女を問わず自撮りが楽しまれている傾向があり、日本に観光に来た中国人男性たちが肩を組んで東京スカイツリーを背景に自撮りしていた、なんて風景も珍しいものではありません。
アジア圏での自撮り文化の開花は中国企業が世界のスマホ市場へ躍進するきっかけを与え、カメラ機能の高さを武器としたOPPOやZTE、ファーウェイなどはその代表的なメーカーと言えます。また台湾系のASUSなどもスマホのカメラ機能を充実させることに注力しており、まさにスマホとカメラ機能は切っても切れない関係となりつつあります。
■マナーを守って楽しく撮影しよう
しかし、そんなスマホカメラ全盛の時代だけに困った問題も増えつつあります。人々は所構わず写真を撮るようになり、そのままSNSへ気軽にアップロードしてしまうようになったのです。
それがただ「キレイな場所だよ」などの言葉とともにTwitterやInstagramに載るだけであれば大きな問題にもならないのですが、誰かの醜態を撮影し「このおっさんキモい」とか「こいつムカつくんだけど」といったヘイト表現とともに掲載されることもしばしば起こり、時にそれは「炎上騒ぎ」となってしまうこともあります。
またイベントや音楽のライブ会場などで場所をわきまえない自撮りや撮影行為をしようとしてイベント主催者や音楽アーティストを怒らせてしまう、といったようなニュースも散見されるようになってきました。
筆者がiPhone 3Gで撮ったノイズだらけの写真をモノクロ加工して楽しんでいた時代はTwitterも日本でようやくブームになりつつある頃で、SNSによる炎上騒ぎなどはあまりない時代でした。自撮りなどの文化もなくフィーチャーフォンでもスマホでもカメラ機能はまだまだ「端末の一機能」的な扱いだったように思います。
しかし時代は変わりました。カメラ機能はスマホの良し悪しすら決定付ける最重要機能になり、人々が常時SNSで繋がり続ける世界ではその撮影したものの取り扱い方もよりシビアになっています。
写真撮影はとても楽しいものです。そして何より大切な思い出となります。自分の「その時」を切り取る大事な記録でもあり、友人との「喜び」を残してくれる素晴らしい道具です。恐らくスマホのカメラ機能はこれから先も驚くべき速度で進化しさらに美しく面白い写真が撮れるようになっていくでしょう。
その時、人々のマナー意識やモラルも進化していることを切に願います。
記事執筆:秋吉 健
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