格安SIMのマイネオが事業説明会を開催!招待キャンペーンはアンバサダーに |
仮想移動体通信事業者(MVNO)として携帯電話サービス「mineo(マイネオ)」( https://mineo.jp )を運営するケイ・オプティコムは18日、都内にて事業説明会を開催し、新たな事業行動指針「mineo way」を骨子とした7つの新施策を発表しました。
mineoは2018年4月に100万回線契約を達成し、現在もMVNO市場において上位のシェアを持つ大手MVNOです。その特徴は同事業が掲げるブランドステートメント「Fun with Fans!」にある通り、ユーザーファーストの姿勢で事業運営を取り組み、公式コミュニティーサイト「マイネ王」などのユーザーコミュニティーの醸成を中心とした口コミ効果を使ったシェア拡大にあります。
今回発表された行動指針や新施策はこれまでに培ってきたユーザーコミュニティをさらに加速させ、事業運営にも食い込ませていく野心的な施策となっています。事業説明会で語られた戦略や方向性とともに、同サービスの今後について考察します。
■行動指針と7つの新施策
今回mineoが打ち出した行動指針「mineo way」とはブランドステートメントの下位に位置付けられるものであり、事業戦略を進めるための重要な舵となります。
その行動指針の内容は、
・シンプルに、正直に。みんなに誠実であろう。
・共有して、共感して、仲間と一緒に創っていこう。
・前例のない未来へ、自ら挑戦しよう。
という3つです。ユーザーとの絆やコミュニケーションを大前提とした運営を目指すmineoらしい指針であり、下記に挙げる7つの新施策は全てこの行動指針の基に運用されることになります。
そして今回発表された7つの新施策が以下の通りです。
●アンバサダー制度の導入
……mineoが運営するユーザーコミュニティサイト「マイネ王」で評価の高いユーザーに社外のサポートスタッフとして参加してもらい、ファンコミュニティ運営へのさらなる参加(共創アンバサダー)や、新規客や契約を検討している消費者へチャットサポート業務などを行ってもらう(サポートアンバサダー)。
●mineoアプリへの新機能追加
……マイネ王などで寄せられたアプリのアイデアをユーザーと運営が意見を出し合いながら実装・公開。
●新テレビCMの製作
……ユーザーにCMへ出演してもらい、生の声をCMとして起用(2月23日より放映開始)。
●mineoプチ体験
……200円買い切りのプリペイドパックや端末・SIMセットの無料レンタルなど、mineoサービスを気軽に試せる機会の増加。
●mineoお渡し店の設置
……従来のオンライン販売や直営店などによる店頭引き渡しだけではなく、オンラインで注文した端末やSIMを店頭で受け取れる店舗を全国64店舗からスタート(3月開始)。
●SIM挿し出荷
……これまで端末とSIMのセット販売では購入者が自分でSIMを挿す必要があったが、あらかじめ端末へSIMを挿して販売するもの。高齢者やMVNO初心者など、SIM交換をあまりしたことがない層からの不安の声を拾い上げ施策化。
●端末ラインナップ強化
……iPhone SE、AQUOS R2 compact、HUAWEI nova lite3などを新たにラインナップ。またAQUOS sence liteを値下げ(いずれも2月21日より開始)。
いずれの施策もこれまで推し進めてきたユーザーコミュニティを中心とした施策をさらに強化するものであり、新規顧客の獲得からコミュニティの活性化まで、全てを強化する全方位戦略と言えます。
■マジョリティ層を取り込むための新施策
これら大量の新施策の裏には、MVNOを契約するユーザー層の変化があります。
ケイ・オプティコム モバイル事業戦略グループ グループマネージャーを務める上田晃穂氏が、MVNO契約者のリテラシー比率を示すスライドを指しながら、
「新規契約者の中心がマジョリティ層へと移り、端末設定を自分でできる人が半減し、人に頼ると答えた人が倍増している」
と語ったように、MVNOの契約者は業界全体でも、携帯電話やスマホの知識が豊富なアーリーアダプター層から、あまり知識のないマジョリティ層へと大きく変化しつつあります。
2018年にMVNO市場が直面した伸び悩みの原因や端末設定などの相談およびクレームの急増は、まさにモバイルリテラシーのあまり高くないマジョリティ層(いわゆる一般層)にMVNOが認知され、広がり始めたことを指しています。
MVNOや格安SIM市場の存在は人々に認知されたものの、契約の仕方が分からなかったりSIMの差し替えに不安があるなどの問題が、MVNOの利用を躊躇させる大きな理由となっていることはMVNO業界では周知のものでもあり、mineoの新施策はこの問題へのmineoらしい回答と言えます。
■野心的な挑戦の中にある不安要素
強気の戦略を打ち出す一方で、新施策には不安点もいくつかあります。1つはアンバサダー制度が正しく機能するのか、という点です。
如何にmineoのサービスに造詣が深く、コミュニティ内でも評価の高いQ&Aを回答できるユーザーをアンバサダーとして起用するとは言え、飽くまでも正規社員やパートスタッフではない「顧客」です。
その顧客に限定的とは言え自社の情報を開示した上で自社のサポートスタッフに従事してもらうというのは諸刃の剣だとも言えます。
上田氏は、
「サポートアンバサダーとして採用する方とは機密保持契約などを交わした上で、さらにチャットサポートなどを録画することでトラブルを未然に防ぐ」
「サポートアンバサダーによるチャットサポートを利用する相談者にも、同意書などを明示し同意していただいた上で利用していただく」
としていますが、実際にトラブルが起きた際の責任の所在や問題発生時の対応など、利用者保護の観点から不安を感じる点は少なくありません。
もう1つは、ユーザーコミュニティの強化がマジョリティ層の取り込みに悪影響とならないか、という点です。
一般的にマイネ王のようなユーザーコミュニティはユーザー同士の強い繋がりを生む一方で、そういった繋がりに束縛性を感じたり、コミュニティに依存するあまり脱退(解約)しづらくなるなどの弊害も生まれます。
コミュニティが大きくなるほどに閉鎖性が強くなる可能性もあり、そういった閉鎖性はmineoが今後取り込みを狙うマジョリティ層が嫌う傾向の強い流れでもあります。
より多くの人々(≒大衆層)を取り込むためにはより開放的で自由な方向へと戦略を取るのが一般的な中で、ユーザーコミュニティをより一層強化していこうという試みが成功するのか、今後注意深く見守る必要があります。
■MVNO業界全体を覆う頭打ち感を打開できるか
mineoは2017年度内の100万回線達成を目標に強気の戦略を推し進め、ほぼ成功させてきた実績がありますが(実際の達成は2018年4月だが目標期日から数日の遅れだった)、その直後にユーザーへの告知なしにデータの圧縮送信(通信の最適化)が開始されていたことが発覚し、マイネ王などのコミュニティでも少なからず物議を醸した経緯があります。
現在は通信の最適化をユーザーが選択できるように変更されていますが、今回のmineo wayで示された「シンプルに、正直に。みんなに誠実であろう。」という指針は、まさにそういった状況や批判からの反省と言えるでしょう。
【外部リンク】通信の最適化選択機能の実装完了と適用時間の変更について(マイネ王・スタッフブログ)
mineoがスライドで示した契約者数推移のグラフを見ても、2018年4月の100万回線達成からユーザー数の伸びが突然鈍化し、その後10ヶ月で約13万回線しか増えていない現状が分かります。
現在mineoでは契約数について明確な目標は立てていないとしながらも、2019年度は「2018年度よりも厳しい数字になると考えている」(上田氏)と語っており、マジョリティ層の増加に伴うMVNO市場全体の伸びの鈍化とともに、ユーザー数の頭打ちに強い危機感を示しています。
ユーザーをサービス運営へ積極的に参加させるアンバサダー制度こそ不安要素があるものの、その他の施策についてはモバイルリテラシーのあまり高くないマジョリティ層の取り込みを強く意識した施策となっており、とくにユーザーの手間を省くSIM挿し出荷やmineoお渡し店の設置、ライトユーザーを意識した安価で人気なスマホのラインナップ拡充などは、十分に魅力のある新施策ではないでしょうか。
紹介コード
https://mineo.jp/syokai/?jrp=syokai&kyb=F0U2C7X4J0
記事執筆:秋吉 健
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