SNS利用の変遷について考えてみた! |
みなさんはTwitterを使い始めた頃を覚えているでしょうか。筆者はかなりの長期ユーザーで13年以上も利用しています。2007年当時はまだ日本語化もされておらず、モバイルギークだけが知ってるマイナーなコミュニケーションツール、といった雰囲気でした。
当時は画像の添付機能もなく、単に140文字以内(日本語は70文字以内だった)で「つぶやく」だけの機能だったTwitterはその後、画像だけでなく動画も添付できるようになり、今やタイムラインでは常に動画が流れています。また企業の広告も多くが動画になりました。
もちろん、Twitterだけではなく、FacebookやInstagramも同様の写真から動画といった変遷を経てきました。さらに動画コンテンツや音楽コンテンツでもスマートフォン(スマホ)の普及とともにダウンロード(DL)販売からストリーミング配信へと進化しています。
こうしたSNSやエンターテインメントコンテンツの利用形態の変化は今の私たちに何を教えてくれるでしょうか。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はSNSの利用形態の変遷を中心に、これからの通信サービスについて考察します。
■人々を虜にしたSNS
MMD研究所が12月16日に公開した調査データ「2020年スマートフォンアプリコンテンツに関する定点調査」によると、2014年からの利用実態の変遷として、
・Twitterは39.3%から46.3%へ増加
・Facebookは52.0%から34.1%へ減少
・Instagramは13.5%から41.3%へ増加
このようになりました。
Facebookのような深いつながりを重視するSNSは利用が減り、TwitterやInstagramのような緩いつながりによって楽しむSNSが大きく伸びている点が特徴的です。
集計は2014年からとなっていますが、2018年からはTikTokも加わり、その利用が順調に伸びている様子が分かります。
2014年と言えば、Apple製「iPhone 6」シリーズ、ソニーモバイルコミュニケーションズ製「Xperia Z3」、シャープ製「AQUOS CRYSTAL」、サムスン電子製「GALAXY Note Edge」、ASUSTeK Computer製「ZenFone 5」シリーズなど、スマホという携帯端末のジャンルがユーザーニーズに合わせて大きく多様化し、市場が拡大した時期です。
スマホの性能や機能面での成熟はSNS文化を大きく発展させただけではありません。通信技術の進歩による通信速度向上は画像や動画の投稿を促し、SNSをエンターテインメントコンテンツとして花開かせたのです。事実、現在のTwitterを情報収集やニュースソースとして利用している人は多いでしょう。
TikTokが若者に受け、大きく伸びている理由もエンターテインメント需要です。現在のオンラインエンターテインメントとは、ただ視聴するだけの存在ではありません。自分たちも発信者として楽しめる点に、人々は大きな魅力を感じているのです。
■SNSが先か、通信容量単価の低下が先か
SNSの人気とともに増えていったのが通信容量(データ通信容量)です。
SNSの需要増が先だったのか、それとも通信料金プランの変化が先だったのかは鶏と卵の関係のように感じますが、SNSが動画も扱えるほどにリッチ化すると、通信容量も急速に増加しました。
2014年当時の通信料金プランを見てみれば、NTTドコモやau、ソフトバンクなどの移動体通信事業者(MNO)は、いずれも月額2,700円前後の基本料金に追加する形で、5GBで5000円や10GBで1万円などのオプションプランを設定するのが標準的でした。
いくら割引施策があるとは言え、たった10GBで1万円以上など今なら震え上がりそうな料金設定です。これにスマホの割賦代金や各種オプションサービスも含めれば、考えたくもない金額になっていたことでしょう。
しかしながら、当時のオンラインサービスやSNSの利用実態からは、それでも十分な容量だったのです。
MMD研究所の調査データをさらに見ていくと、いずれのSNS利用率でも「若い世代が一番高く、世代が上がるごとに徐々に落ちていく」という傾向が分かります。
この調査では対象外となっていますが、恐らく10代のSNS利用率や依存度も20代並みか、それ以上に高いことが十分に予想されます。
10代や20代のSNS利用率の高さは通信キャリア各社の学生割引施策(学割)などに牽引されているという見方もあります。各社ともに「未来の顧客」を獲得するため、学割には特に注力しています。
大量にデータ通信を利用しても料金が比較的安価である点や自分の収入から支払っていない気軽さなどから、通信料金や通信容量に比較的無頓着だとも言えます。
一方でひと昔前はデータ通信料が青天井の従量制であったために使いすぎて高額請求されてしまうことを“パケ死”と言っていましたが、いつの頃か月当たりの高速データ通信容量を使い切って速度制限がかかることを若者の間では“パケ死”と言うようにもなっていました。
■そして通信容量無制限の時代へ
その他のアプリの利用率を見てもストリーミング型の動画配信アプリやニュースアプリの利用率が特に高く、SNSとともに近年のスマホアプリ利用率の上位を占めています。
常に通信を必要とするこれらのアプリの利用率の高さはそのまま通信料金の高額化へと繋がります。人々が通信料金の低廉化を訴え、政府がその引き下げに躍起になるのも無理はないといったところでしょう。
奇しくもこのコラムを書いている12月18日に、NTTドコモは5Gギガホおよびギガホの改定プランとなる「5Gギガホ プレミア」および「ギガホ プレミア」を発表しました。
従来のギガホからさらに月額1,000円安くなった上、5Gギガホ プレミアでは利用可能データ量が無制限に、ギガホ プレミアでは利用可能データ量が30GBから60GBへと倍増しました。その他、月間の通信利用量が3GB以下だった場合は1,500円引きとなる割引施策もあります。
NTTドコモが「ahamo」に続く通信料金値下げ施策として発表したものですが、他MNOもこれに追従、もしくは対抗する施策を出してくるものと思われます。
来年以降、モバイルデータ通信の容量単価は一気に下がるものと思われますが、それらもすべてはユーザー次第です。自分の使い方にあったプランを見定め、正しい選択をしなければ無駄な出費になってしまうか、SNSや動画配信サービスを十分に楽しめない環境になってしまうでしょう。
筆者がTwitterを始めた2007年の夏、SNSというものがここまで人々の生活の中心に存在するサービスとなるとは想像もしていませんでした。正直、7~8年前ですら現在の動画が溢れるTwitterのタイムラインは想像できなかったと思います(6秒動画アプリ「Vine」の登場が2013年、Twitterが標準で動画投稿機能を実装したのは2015年)。
それほどに時代の流れと技術の進歩は早いのだと改めて感じる今日この頃です。この先、私たちはSNSをどのように活用していくのでしょうか。定額で通信容量無制限が当たり前になり、SNSネイティブ世代とも言える現在の10代の若者が大人になった時、SNSコミュニケーションの姿はさらに大きく変わっているかもしれません。
記事執筆:秋吉 健
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