物理フルキーボード搭載スマホ勢待望のUnihertz Titan Slimのチェック点を解説!今回は特にクセが強いかも!?

既報通り、中国・上海を拠点としているベンチャー系メーカーのUnihertzがパソコン(PC)のキーボードと同じQWERTY配列の物理キーボードを搭載したスマートフォン(スマホ)「Unihertz Titan」シリーズの新機種「Unihertz Titan Slim」の一般向け販売を開始しました。価格(金額はすべて税込)は同社の公式Webサイト内にある公式Webストアでは329.99ドル(約45,000円)、大手Webストア「Amazon.co.jp」では45,999円となっています。

Unihertz Titan Slimはディスプレイ形状が一般的なスマホと同じような縦長の長方形となり、ほぼ正方形のディスプレイだったこれまでのUnihertz Titanシリーズとはかなり異なるアプローチの製品であることが窺え、また防水・防塵・耐衝撃に対応しておらず、これまでタフネスも売りにしていた同シリーズとしてはかなり性質が変わっているため、Unihertz Titanの名前を持ってはいるものの、また違ったコンセプトだと言って良いでしょう。

そんなUnihertz Titan Slimですが、筆者は従来までのUnihertz Titanシリーズもクラウドファンディングから支援をして手に入れており、今回も同様にリワードとして実際に製品が届いていたため、前回前回は外観や基本機能などを紹介してきました。本記事では引き続いてUnihertz Titan Slimを実際にしばらく使っていて気が付いた点や改善して欲しい点、良かった点をまとめてお伝えしたいと思います。

【大前提 基本的な動作・挙動は非常に快適】

まず、実際に使って気が付いたことをあれこれと言う前に、「Titan Slimの挙動や動作面においてはとっても快適なのである」、ということはお伝えしておきたい。

SoC自体はMediaTek製のミドルレンジ向け「Helio P70」ではあるものの、画面解像度自体は768×1280ドット(WXGA)と、それほど大きいわけでもなく(そして、ディスプレイサイズも4.2インチと小さめなので、あまり粗さを感じない)、動作メモリー(RAM)も6GB RAMとそれなりの容量が確保されていることもあり、処理の重いゲームなどのコンテンツ以外であれば、ブラウジングやSNS、メッセージやテキストアプリ程度であれば、サックサクに動いてくれます。
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ベンチマークアプリの「PC Mark」でのテストスコアとランキング内の周辺値付近。解像度が抑えめなので、スコア以上にサクサクと動く。

動作そのものは十分に合格レベルとなってはいるので、この点を踏まえたうえで感じたことをお伝えしていきます。

【TitanSlimを使って気が付いた抑えるべきポイント】

・縦画面での使用が最前提であること

TitanシリーズやBlackberryをはじめとするストレート型物理キーボード搭載のスマートフォンは(スライドキーボード機構の場合などは除いて)縦持ちオンリーで使用(動画系コンテンツを視聴する際には横向きにすることはあるものの)するのが基本となります。

一方で、画面を横向きにした状態での物理キーボードの利用は想定されていないため、スマホ向けのレイアウトに対応していない横長になっている一部のWebサイトなどで直接文字入力を行う際には拡大(ピンチ)操作を併用する必要があったりとひと手間が発生する場合もあります。
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当サイトはスマホ表示に対応していますが、WebページがPC向け表示の際にフォームから文字入力する場合はひと手間が発生するかも。

・カメラ性能は極めて普通

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Titan Slimのリアカメラは、非常にシンプルなシングル構成

TitanSlimのメイン(リア)カメラは約4,800万画素CMOSカメラで、広角やマクロ、測距センサーなどのサブカメラのないシンプルな単眼のカメラです。

カメラアプリはMediaTekのSoCを採用したスマホ向けの標準のカメラアプリで、アプリのUI(ユーザーインターフェース)なども、今となってはいささかクラシカルなものとなっています。

写りに関しては夜間や暗所での(オートモードでの)撮影はかなり厳しく、夕暮れ時でもホワイトノイズが若干出てきてしまいますが、日中や明るい場所などであれば、それなりの写真の撮影も可能です。

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TitanSlimのカメラでの撮影例(オート設定で撮影し、リサイズのみ実行したもの)

また、シンプルなシングルカメラなので、細かい設定を調整可能なサードパーティ製のカメラアプリとの相性が良く、これら導入することで、カメラ周りの機能をある程度、拡充可能です。
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買い切りのカメラアプリ、「Manual Cam」(手動カメラ)の画面。サードパーティ製のカメラアプリなら標準カメラにはないシーンモードなどの詳細設定が可能なものも多い。


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余談になりますが、Titan Slimの標準カメラアプリは設定でシャッター音を鳴らさない設定が可能。大きな音を出せない場所でも利用できるのは良いところ。


【TitanSlimを使って気に入ったポイント】

・QWRTYキーボードは長文入力にはやっぱり便利

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キーボードは、文字入力以外でのある不満(後述)があるものの、押しやすくレスポンスも凄くいい。

小型モデルとして登場した先代モデルの「Unihertz Titan Pocket」よりも、さらにボタンの小さくなった物理QWERTYキーボードですが、Blackberryシリーズのスマホと同様にキーに角度がつけられており、誤入力のしにくく、スムーズにタイピングができるものとなっています。

文字入力に使うIMEアプリはこれまでのTitanシリーズと同じ「Kika-Keyboard」がプリインストールされていますが、Titanシリーズ専用に作られた日本語IMEアプリの「AquaMozc for Titan」(有償買い切りのアプリ)を導入すると、さらにスムーズになってオススメです。

・Titanシリーズお馴染みのスクロールアシストで快適ブラウジング&SNS

キーボードをタッチパッド化し、キーボード部をスワイプして画面操作できる機能である「スクロールアシスト」は初代Unihertz Titanから継続して搭載されている機能で、画面に手を触れることなくスクロールさせることができるというものです。

Webブラウザーでのサイト閲覧時の縦方向のスクロールはもちろん、TwitterなどのSNSアプリにおいても利用可能で、操作イメージとしてはパソコンで使うマウスのスクロールホイールの感覚が近いかもしれません。(もちろん、PC向けレイアウトの横方向にも広いサイトの場合は横にもスクロール可能)


【TitanSlimを使って気が付いた気になった点】

続いて、TitanSlimを実際に使って気になった後続モデルなどで改善して欲しい点を挙げていきます。

・ホームキー兼用の指紋センサーが誤タッチしやすい

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画像内矢印の部分がホームキー兼用の指紋センサー。慣れるまでは特に「R」、「T」、「Y」、「U」のキーを押すときに同時に触れてしまいやすい。

本機のアイデンティティでもあるQWERTYキーボードは小さいながらもしっかりと押しやすく、よくできているのですが、上段のボタンを押しているとホームキーを兼ねた指紋センサーに指が振れてしまい、タッチに反応してホーム画面に戻ってしまうことが何度かありました。

BlackBerry Key2などでは物理的に押すことのできるスペースキーに指紋センサーが配置されているなど、キーボードの配列やキーアサインの点で見るとやはり、本家のBlackBerryが非常に洗練されていたことがわかります。

誤操作の回避方法としては、ディスプレイ内にホームキーなどを表示(3ボタンオペレーション)にして指紋センサーにホームキーの機能を持たせないように設定を変更するか、ジェスチャーオペレーションを使うようにして指紋センサーにホームキーの機能を持たせない設定(ホームキーの機能を「操作なし」に変更する)にしてしまうなどの解決策があります。

3ボタンオペレーションにおいては、元々、BlackBerry Key2やKey2 LEではホームキーなどを画面内に表示させて利用するので、人によってはこちらの方がすぐに慣れることができるかもしれません。(筆者もこの変更ですぐに慣れました)

本機を含むTitanシリーズの全スマートフォンは物理キーボードの指紋センサー(兼、ホームキー)のみタッチキーになっているので、これが指紋センサー付きの押し込み型の物理キーになってくれれば快適性がさらに向上できると思うので、後継機などが登場するのであれば、この辺りも改善して欲しいところです。(というか、画面下の黒い帯の空白部分にタッチキーで3ボタン配置にしてくれれば尚のこと、良いのですが…)


・「Titan」なのに防水防塵でもなく、タフネスでもないのに妙にゴツイ

これまで、Titanシリーズは初代が防水防塵耐衝撃までを備えた、まさにTitan(※タイタンとは本来、神話に登場する巨人のこと)なスマートフォンでしたが、第2弾の「Titan Pocket」は耐衝撃機能は備えながらも防水防塵機能は省かれていました。

そして、今回のTitan Slimは「Slim化」したことで、防水防塵機能だけでなく、耐衝撃機能までなくなり、TitanPocketで削除されていた非接点充電のqiも非搭載のままにもかかわらず、本体の厚みはそれほど薄くなっているわけでもない(初代Titanは本体厚が17mmで、TitanPocketは12.75mm)という塩梅。
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非常に大型かつ、SoCの性能においては劣るものの、防水防塵耐衝撃にqiに3.5mmジャックまで搭載している初代Unihertz Titan。今でも筆者は愛用中。

初代Titanと比べて確かに携帯性が上がり、TitanPocketよりは画面が大きく実用性は上がったものの、それ以外に失ったものも少なくはなく、「Titanという名前だけど、頑強さもなく、いくつかの機能は先代、初代モデルと比べると省かれたものがある」という中途半端さも見えてしまっています。

また、FMラジオチューナー搭載にもかかわらずイヤフォンジャック非搭載となったのも、個人的には大減点要因です。(特に問題に思ったのはUSBType-C接続のイヤフォンでは聴取できず、同梱の変換コネクタにイヤフォンを挿した状態でないと利用できないというところ)

せっかく基本性能や使いやすいキーボードがあるのに、先代・先々代モデルと比べて明らかな機能削除は本当に勿体ないです。

筆者個人としては個人的にはもう少し振り切った「Titanらしさ」や、「Slimの名に相応しいスマートな外観と機能」のどちらかでも欲しかったのですけども…


・5G非対応は惜しい

Unihertzのスマートフォンにおいて、5Gに対応したスマートフォンとしてはサブディスプレイ搭載の「Unihertz TickTock」のみしかなく、Titan Slimについても、4G(LTE)までの対応となっています。

物理QWERTYキーボードを搭載した5G対応のスマートフォンといえば、Planetcomputersの「Astro Slide 5G Transformer」(横向きスライドキーボード搭載のスマホ)以外には国内向けには存在していないため、個人的にQWERTYキーボード搭載のストレート型スマホの5G搭載モデル第1号として期待していただけに、ちょっと残念です。

国内の大手キャリアなどからリリースされている現行のスマートフォンなどは、すでにエントリーモデルであっても、ほぼ5G対応のものが主流となっていることから、Titan Slimも5Gに対応してくれていれば、さらに長期間の稼働が期待できたと思うのです。
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Unihertz唯一の5G対応モデル「Unihertz TicTock」。本機は5G対応そのもの以上に、背面側のサブディスプレイが特徴。コンセプトこそ異なるが、こちらもTitanシリーズに引けをとらない、タフネスモデルでもあったりします。


まとめ:とは言うものの…

良い点も気になった点も色々あるのですが、それでも「現行のAndroid環境で、物理キーボードを搭載した(正方形型ディスプレイなどのクセの強い特徴をもたない)ストレートモデルのスマートフォンとしてはほぼ、唯一の存在でもある」ため、これまでのTitanシリーズのスマートフォンとは別物としてとらえて見ると魅力的な端末であるということに間違いはありません。

実際、キーボードはかなり使いやすく、動作も十分実用レベルとBlackberryを始めとするストレート型のQWERTYキーボードを搭載したスマートフォンを愛用してきたユーザーとしては、待望の1台ではないかと思います。

決して現在の主流派のスマートフォンではありませんが、それでも少なくない人の期待になんとか応えてくれる大きな意味のある端末に仕上がっているのではないかと思います。
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筆者の歴代QWERTYキーボードスマホたち。(現役稼働のもの数台を含む)キーボードスマホは凝りだすと止まりませんのよ!!







記事執筆:河童丸


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