AirPods Pro(第2世代)をフィールドテストレビュー!

Appleから新型の完全ワイヤレスイヤホン「AirPods Pro(第2世代)」が9月23日に発売されました。前機種の「AirPods Pro」(2019年モデル。以下「初代AirPods Pro」と表記)を愛用していた筆者もさっそく発売日に購入し、すでに前回の記事にて開封から初代AirPods Proとの比較までを紹介しました。

今回は実際に自宅や街中、混雑する電車内、家電量販店などの電子機器の多い場所などでAirPods Pro(第2世代)を長時間使用し、さまざまな設定を試した上でフィールドテストを行いました。

アクティブノイズキャンセリング機能や音質の強化を謳ったAirPods Pro(第2世代)は初代AirPods Proから実際に違いを感じられるまでに進化したのでしょうか。長時間のフィールドテストの結果も交えながら、写真やスクリーンショットとともにレビューします。

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AirPods Pro(第2世代)の実力と進化を確かめる!


■明らかな進化を感じさせる音質の向上
はじめに結論から書いてしまいましょう。AirPods Pro(第2世代)は「初代AirPods Proとはまったくの別物」です。

充電ケースと本体はデザインが酷似しており、充電ケースではスピーカーやストラップループ(ストラップホール)の有無、本体では集音用マイクの位置などが違う程度で、一見すると大した進化が見られませんが、見た目で判断するのは早計です。

AirPods Pro(第2世代)をiPhoneとペアリングし、耳に装着して音楽を聴取した瞬間に音質の違いを感じます。高音域や低音域のピークをしっかりと感じられ、音質が非常にクリアなのです。

初代AirPods Proも十分な音質でしたが、良くも悪くも非常にフラットな表現でした。高音域も低音域もしっかり表現はされているのですが強調された感がなく、静かな自宅の室内や図書館で聴く分には問題なくとも、街の雑踏や電車内の騒音の中ではアクティブノイズキャンセリングを利用していても若干音が負けてしまう場面がありました。

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iPhoneとのペアリング作業は超シンプル。iPhoneの近くでAirPods本体のフタを開けるだけ(本当にこれだけ)


AirPods Pro(第2世代)では、このフラットな音質がよりメリハリのある表現にチューニングされ、高音域・中音域・低音域にしっかりとピークを感じます。

とくに低音域の強調が強めで、街中や電車内での利用を意識したチューニングであることが理解できます。

音質自体も、単にチューニングが変化しただけではありません。それぞれの音域の解像度も40代の筆者の耳ですら判断できるほどに向上しており、非常にクリアで繊細な音表現になりました。

例えるなら、初代AirPods Proが薄曇りの柔らかな春の日差しだとしたら、AirPods Pro(第2世代)は初夏の晴天の日差しです。明るく色鮮やかでコントラストの強い景色が目の前に広がっているような気分です。

これまでのAirPodsシリーズの「当たり障りのない無難な音作り」に不満があった人も納得できるのではないでしょうか。

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変わっていないのは形だけ。中身は驚くほどの進化を見せている


■聞こえそうで聞こえない少し聞こえるアクティブノイズキャンセリング機能
音質の向上はAirPods Pro(第2世代)に搭載された新開発チップセット(SoC)「H2」に由来する部分が多くありますが、H2のもう1つの恩恵はアクティブノイズキャンセリング機能の強化です。

AirPods Pro(第2世代)のアクティブノイズキャンセリングの性能は、初代AirPods Proの約2倍とアナウンスされており、公称値で毎秒48,000回ものサンプリングを行い外部の音を逆位相の音によって「相殺」します。

「音」は波であり、空気中を伝わる速度があります。その波を捉え、逆位相の波を当てることで打ち消すというのがその原理ですが、その波をどれだけ繊細に捕らえて逆位相の音を素早く当てるのか、というのがノイズキャンセリングにおいて重要になります。

AirPods Pro(第2世代)ではこの性能が2倍となったことで、物理的にアクティブノイズキャンセリングの質が向上しているのです。

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アクティブノイズキャンセリング機能は本体の軸部分を長押しすることでON/OFFできる(設定で変更可能)


AirPods Pro(第2世代)のアクティブノイズキャンセリング機能の素晴らしい点は、単に騒音の打ち消し性能が向上しただけではないことです。

AirPods Pro(第2世代)の「騒音の消去性能」を忌憚なく評価するならば、ソニー製の「WF-1000XM3」や、さらに性能が向上した「WF-1000XM4」よりも一段劣ると言えます。

しかしながら、AirPods Pro(第2世代)のアクティブノイズキャンセリング機能の真骨頂はそこにはありません。

AirPods Pro(第2世代)では、街の雑踏や電車のモーター音および空調の騒音など、人が不快に思う音を重点的に打ち消します。その上で、車内アナウンスや駅のホームアナウンスなどの「人の声」は僅かに聞こえるのです。

例えるなら、電車の中がとても静かな図書館になったような気分です。誰かが遠くで静かに話をしている声は聞こえるけれど気にはならず、それ以外の音は一切しない。そんなチューニングです。

そのため、アクティブノイズキャンセリング機能をONにしていても電車がどこにいるのか、次にどこに停まるのかなどのアナウンスが判断できます。

もしくは「アナウンスの内容は聞き取りづらいが何かを言っている」という判断ができるため、耳元の1クリック操作でアクティブノイズキャンセリング機能をOFFにしてアナウンスを確認する、といった動作が自然に行えます。

この「ほとんど何も聞こえないが人の声だけ僅かに聞こえる」というチューニングが実に絶妙で使いやすいのです。

街中を歩きながら使用していて、まったく何も聞こえなくなってしまうノイズキャンセリングにはないメリットだと感じることが多くありました。

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集音用マイクの位置の変更もアクティブノイズキャンセリング機能の向上に一役買っているかもしれない


■地味だが効果の大きな「適応型環境音除去」機能
そしてAirPods Pro(第2世代)のアクティブノイズキャンセリング機能には、さらに進化した部分があります。それは「適応型環境音除去」という機能です。

初代AirPods Proの場合、アクティブノイズキャンセリング機能をOFFにした状態を「外部音取り込み」モードとして外部の音をそのまま耳に伝えることで、まるでイヤホンを装着していないかのような環境を作り出していました。

AirPods Pro(第2世代)では、この外部音取り込みモード時に工事の激しい騒音など一定音量以上の音量を若干下げて耳に伝える適応型環境音除去機能がオプションとして追加されたのです。

これも処理性能が大幅に向上したH2チップの恩恵と言えます。

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地味に思えるがとても強力で快適な適応型環境音除去機能。常にONにして使いたくなる


■初代AirPods Proで悩まされ続けた「音飛び問題」
AirPods Pro(第2世代)の強化ポイントはノイズキャンセリングや音質ばかりではありません。

実は、初代AirPods Proでは1つの大きな問題がありました。それは「時々音が途切れる(音が飛ぶ)」というものです。

ワイヤレス方式だから仕方がないとも言えますが、駅のホームのような騒音の激しい場所や家電量販店のようにさまざまな電波が飛び交う場所に行くと、稀に音が途切れることがあったのです(いわゆる「音飛び問題」)。

初代AirPods Proに搭載されていた「H1」チップの性能の限界なのか、それとも電波状態の悪さに由来する環境的な問題なのかは判断が付きませんでしたが、2019年の発売当初からしばらくはかなりの頻度で音が途切れ、ネット上でも問題として話題にのぼるほどでした。

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初代AirPods Proの唯一にして最大の難点が「音飛び問題」だった(画像は初代AirPods Pro)


この音飛び問題はその後のファームウェア・アップデートによってかなり軽減されましたが(完全には解消されなかった)、その調整内容は「ノイズキャンセリングの性能を落として(恐らく外部音のサンプリング回数などを減らして)処理負荷を軽くして音飛びを減らす」というものでした。

つまり、音飛びはかなり減ったもののアクティブノイズキャンセリングの性能も若干落ちてしまい、AirPods Proの本質が揺らぐような調整だったのです。

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AirPods Proの存在意義が問われるアップデートだったと言える(画像は初代AirPods Pro)


■音飛びを完全に解消しバッテリー持続時間も延長
今回AirPods Pro(第2世代)で筆者がもっとも気にしていたのはこの音飛び問題が解消しているかどうかでした。

この点を確かめるため、神奈川県海老名市から横浜市までを電車で移動し、横浜駅前の商店街や地下街、複数の家電量販店の店内などを移動しながら4時間使い続けましたが、音飛びは一度も発生しませんでした。

iPhone(iPhone 14)本体でもゲームアプリと動画試聴と音楽再生を頻繁に切り替えるなど処理負荷が高めな操作をいくつか行ってみましたが、音飛びは一切確認できませんでした。

また、アクティブノイズキャンセリングや適応型環境音除去機能をON/OFFしたり、音楽の再生やボリューム調整などさまざまに操作を行いましたが、こちらも素晴らしく快適でまったく不満がありません。

適応型環境音除去機能については駅前などでその効果を大きく感じました。大音量で宣伝をするアドトラックなどが走り抜けても、一定以上の音量はマイルドに調整されて耳に届きます。

いわゆる「耳にささる」ような激しい音量がなくなるため、人と会話しながら街を歩く際などにとても有効だと感じました。

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アクティブノイズキャンセリングや適応型環境音除去機能を最適化するためにも、設定からイヤーチップ装着状態のテストは行っておこう


バッテリー持続時間についても文句なしの合格です。

公称値では最大連続使用時間は6時間、充電ケースを併用した場合は最大で30時間となっています。これは初代AirPods Proと比較して最大連続使用時間で1時間、充電ケースを併用した場合で最大6時間の延長です。

実際に4時間使い続けたあとのバッテリー残量は33%で、ぴったり6時間使用できる計算となりました。

一般的に4~5時間も充電ケースに収納することなく使い続ける状況はあまりなく、さらにAirPods Pro(第2世代)は5分の充電でも1時間の連続使用が可能であるため、喫茶店での休憩や食事中などの僅かな時間で充電ができるため、丸1日以上も使い続けることが可能です。

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休日に街を歩き回ってもバッテリーの心配がない


またAirPods Pro(第2世代)には、使用しない時にバッテリーの充電状態を80%にキープする機能があります。

これは初代AirPods ProやAirPods(第3世代)にもあった機能ですが、この機能によってバッテリーの劣化を大きく抑制することができます。

毎日何時間も利用する人にはあまり意味がありませんが、時々持ち歩きたい人などは、普段満充電状態を維持し続けてしまうとバッテリーの劣化が早まるため、80%充電を行う設定を必ずしておきたいところです。

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この設定を行っていても、ユーザーの使い方に合わせて満充電を行ってくれるので基本的には常にONにしていて問題はない


■音量調整や通話品質の高さも満足度高し
AirPods Pro(第2世代)で追加された音量調整機能も実に便利で、従来感圧センサーが内蔵されていた軸部分にタッチセンサーも内蔵され、上下に指をスライドさせるたびに「コン」という小さなクリック音とともに音量が1段階上下します。

一気に音量を変えたい場合は若干面倒ですが、そのような場合は短く押して音楽再生を止めてしまえば良いので操作上気になることはありませんでした。

また通話機能も試しましたが、初代AirPods Proよりも若干聞き取りやすく、こちらの声も先方へクリアに届いていたようです。

音楽再生や通話におけるiPhoneのワイヤレスコントロールデバイスとしての完成度が向上したことで、今まで以上に普段使いに適したデバイスに仕上がっています。

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音量調整機能は本当に便利だ。デザインを損なわず追加してきたのは素晴らしい




■文句なしの満点合格!全AirPodsユーザーが買い替えて損なし!
音楽再生音質、アクティブノイズキャンセリング性能、適応型環境音除去機能、Bluetooth接続性、バッテリー性能、充電性能、音量調整、マイク性能、これらについてフィールドテストを行い、筆者が出した結論は「満点合格」です。

筆者はデバイスレビューにおいて、欠点よりも利点を探して評価する傾向がありますが、今回ばかりは本当に機能的・性能的な欠点がありません。筆者自身、ここまでの提灯記事を書くことになるとは想像もしていませんでした。

AirPodsシリーズに共通する「ケースから取り出して耳に装着するだけですでにスタンバイ状態になっている」というiPhoneとのペアリングのシンプルさも含め、とにかく使いやすくストレスや不満を一切感じないのです。

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AirPodsシリーズの完成形と断言しても過言ではない


正直、音質や適応型環境音除去機能では期待以上だった部分もあり、100点満点どころか120点を付けたくなるほどです。

それでも欠点を探すのであれば……本当にたった1つの欠点は「価格」でしょう。

公式オンラインストアで39,800円という価格は決して安くなく、万人にオススメできるものではありません。しかしながら、それでもiPhoneで最高に快適な音楽聴取を楽しみたいなら、AirPods Pro(第2世代)一択です。

初代AirPods Pro発売から3年が経過し、発売当時に買った人であればバッテリーの寿命などでそろそろ買い替え時が来ていると思います。

アクティブノイズキャンセリング機能のないAirPodsからの買い替えもオススメです。一度この機能を使ってしまったら、二度と普通のイヤホンタイプには戻れません。

真にストレスのない快適なモバイルリスニングとは何なのかを、ぜひ体験してみてください。

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あなたのモバイルライフにノンストレスの音楽体験を




記事執筆:秋吉 健


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