スマホ依存について考えてみた!

みなさんの中に自身のことを「スマートフォン(スマホ)依存」だと感じている人はいるでしょうか?かく言う筆者は完全にスマホ依存人間です。

朝起きれば、真っ先に手に取るのはスマホですし、食事が終わればスマホでニュースを観ていますし(テレビでニュースを観ながらスマホでも観ている)、暇さえあればスマホを手に取ってTwitterなどを観ています。

それでも筆者はまだ軽度だと思うほどにスマホ依存が重症化している人もいます。ベッドに入ってもスマホを眺めてしまう、お風呂の中でもスマホをいじっている、トイレでもスマホ片手に篭ってしまう、LINEの通知が気になって毎分のようにスマホを確認してしまう。

身に覚えがある人は少なくないはずです。人々はどの程度スマホに依存してしまっているのでしょうか、スマホ依存は何が問題なのでしょうか。スマホ依存から脱却する必要はあるのでしょうか。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はスマホ依存の今を追いかけます。

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スマホは楽しい。だから依存してしまう


■そこにあって当たり前の存在になったスマホ
そもそもスマホ依存とは一体何でしょうか。「スマホ依存」という言葉には学術的な定義があるわけでもなく、病理学的な名称でもありません。単に「スマホに依存しすぎている人」や「スマホに依存した生活になっている状態」を指した俗的な言い回しです。

しかし、この「スマホに依存した生活」という表現に思い当たる節の多い人は、恐らく大量にいます。冒頭でも書いたようにお風呂やトイレの中でさえもスマホをいじっていたり、ベッドに入ってもずっとスマホで動画を観ていて睡眠不足や睡眠障害になる人は跡を絶ちません。

そういった「病気として定義されているわけではないが明らかに依存している」という状況だからこそ、性質(タチ)が悪いのです。正式な病気であれば周囲も諭したり注意を促しやすいですが、単なるマナーや生活習慣の問題だと、「私の勝手だ。誰にも迷惑はかけてない」と考える人も少なくないでしょう。

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なぜ人々はスマホを手放せなくなってしまったのか


MMD研究所が2022年11月に公開した「2022年スマホ依存と歩きスマホに関する定点調査」によると、「スマホ依存の自覚」の調査項目で「かなり依存している」、「やや依存している」と答えた人の割合は合計で69.9%と、ほぼ7割に達しています。

しかしながら、筆者はこの数字以上に注目した数字があります。それは「わからない」と答えた人の割合です。

2019年からの継続した調査データではスマホ依存を自覚している人の割合は年によって増減しつつも常に70%前後ですが、わからないと答えた人は年々増加傾向にあります。

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依存していない、と言い切れる人も常に2割程度いる


「自分がスマホに依存しているのかわからないって何だ?」と不思議に思いましたが、スマホが日用品となった現在を考える中で、ハッと気がつくものがありました。

もしかしたら、スマホはテレビと同じように「そこにあって当たり前のもの」、「生活の中で常に使っていて当たり前の道具」という認識の人が増え、依存しているという認識がなくなっているのではないかと考えたのです。

例えば「あなたはテレビ依存ですか?」と尋ねても「違う」と答える人は多いでしょう。しかし多くの人は夕食を食べながらテレビ(テレビ番組)を観るのが当たり前になっていますし、暇になれば取り敢えずテレビの電源を入れて、観たい番組やニュースがあるわけでもなくポチポチとリモコンのチャンネルボタンを押し続けます。

テレビを観る習慣のない人からすれば、それは立派な依存あるいは中毒状態です。人々が観たい番組もないのにテレビを観始めるように、観たいニュースやSNSのメッセージもないのにスマホを手に取り意味もなく画面をタップしてしまうという行為がスマホ依存であるという意識が、もはや存在しなくなるほどにスマホが日用品化して来ているのではないでしょうか。

依存、という言葉に明確な定義がないが故に、依存しているという自覚が生まれないのです。

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サッカーW杯が無くとも、毎日テレビを3~4時間(あるいはそれ以上)観る人は多い。それは十分に依存状態ではないだろうか


■新しい刺激を簡単に得られる道具だから依存してしまう
それでもやはり、スマホ依存を自覚している人は圧倒的多数です。その点はまだ救いがあるのかもしれません。

スマホ依存の自覚の有無について性別および年代別に調べてみると、ここでもなかなか興味深い数字が現れます。

全体的には20代~40代の男女で「かなり依存している」、「やや依存している」と答えた人の割合が高い傾向にありますが、「かなり依存している」のみに絞ってみると、唐突に10代の男女が台頭してきます。

10代の男女ではいずれも「やや依存している」に並んで最も多い数字(31.6%)となっており、子どもがスマホにハマりやすい傾向にあることが伺えます。

また、「わからない」と答えた人の割合を見る限り、前述のようにスマホが日用品として当たり前の存在になり依存状態にあることを自覚していない人が、10代~30代の男性と10代~20代の女性に多いのではないかという推察も立てられます。

高齢者の場合、そもそもスマホを使いこなせている人の割合が少ない傾向もあるため、この調査からでは判断の難しいところがあります。

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スマホ依存を自覚していなければスマホ依存ではない、とはならない


では、人々は依存を自覚するほどにスマホで毎日何をしているのでしょうか。

堂々のトップに輝いたのは「動画視聴」(45.5%)でした。次いで「LINE」(44.2%)、「ネットサーフィン」(41.2%)、「SNS」(39.1%)と続きます。

意外にも少なかったのは「ゲーム」(29.4%)や「音楽」(23.5%)でしょうか。メールや電話の依存度と大差がなく、関心の低さが伺えます。

人々は常に動画への関心が高く、コミュニケーションに飢えています。常に新しい情報が入ってくる、という刺激に飢えていると言い換えても良いでしょう。

スマホはそういった刺激を、変化のない日常に簡単に与えてくれる手軽なツールだったからこそ、人々は知らず知らずのうちに依存してしまったのかもしれません。

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ほんの数秒という僅かな時間でも新しい情報を大量に入手でき、刺激を得られるというのは物凄いことだ


■大切なのはスマホの使い方をルール化すること
それでは、そのようなスマホ依存の状態から私たちは抜け出さなければいけないのでしょうか。

筆者は「程度にもよる」と考え、さらに「スマホに依存しているという自覚を持つことのほうがずっと大事」だとも感じています。

例えば食事の後や暇な時間にスマホをいじる程度であれば問題はないでしょう。しかし誰かと食事中にスマホをいじり続けることは相手に失礼になる場合もありますし、ベッドの中でずっとスマホをいじっているのは健康管理の上で大きな問題が発生しかねません。

そういった「スマホをいじってはいけない状況」をしっかりと想定し、その状況での利用を控えることを常に意識する必要があります。

スマホが日用品になればなるほど、その存在と利用方法に無頓着になります。気がついたときには食事中の家族の会話がなくなっていたり、慢性的な不眠症に悩まされるといった事態にも陥りかねません。

スマホに依存した生活が悪いのではなく、スマホを使用して良い場面や状況をわきまえず、節操なく使い続けることが問題なのだと筆者は考えます。

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子どもの場合、スマホの使いすぎで急性内斜視になる場合もある。スマホを使う時間や使う際の姿勢などにも注意してあげたい


MMD研究所のアンケート調査では「スマホ依存から抜けだす必要があると思うか」という項目もありましたが、状況はそれほど簡単にYESかNOかで判断して良いものではないように思います。

もはや私たちの生活はスマホ抜きには語れません。毎日バッテリーの残量を気にしなければいけないほどに使い倒しているスマホが、依存していない道具なわけがないのです。

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こればかりは設問の設定の仕方が悪いように思える


繰り返しとなりますが、大切なのは「スマホに依存している、あるいは頼った生活をしている」という自覚を持ち、節度を持って使うことを意識することです。

「お風呂の時くらいは情報から離れて目を休めよう」
「布団に入ったらスマホは見ないようにしよう」
「家族や友人といるときはスマホよりも会話を大切にしよう」

そんな小さな心がけのいくつかだけで、スマホのある生活はとても充実していくはずです。むしろ、メンタル的にもフィジカル的にも健康になれるはずです。

スマホはどんな時も便利な道具ですが、使いすぎれば悪影響を及ぼします。「依存」の境界線を誰も定義してくれないからこそ、自分自身で使い方にルールを作りましょう。

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日常の「当たり前」になったスマホだからこそ、正しい使い方を目指そう


記事執筆:秋吉 健


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