ショート動画とコマースについて考えてみた!

筆者には最近、ちょっとした悩みがあります。YouTubeのショート動画(Youtube ショート)にハマってしまい、ちょっとした休憩時間や就寝時に「少しだけ……」と観始めると、気がついたら1時間以上も観続けてしまっていることがあり、時間の浪費だけではなく睡眠時間まで削ってしまうことがあるのです。

それだけでは飽き足らず、ショート動画で紹介された面白い工具類などに目を奪われ、そのままAmazonなどで検索して購入してしまうことも。広告動画の良いカモだなぁと我ながら苦笑してしまいますが、それで結構満足のいく道具が手に入ったりするのでwin-winな側面も多々あったりします。

まるで本のページをめくるようにフィードとして次々に流れてくるショート動画は、視聴が手軽でショートコント的な面白さが特徴ですが、人はそこに何を求めて観続けてしまうのでしょうか。また、広告としての動画をどのように捉え活用しているのでしょうか。

感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はショート動画やそこで展開されるコマースについて考察します。

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最近は何故かマーモットの動画にご執心だ


■ショート動画とコマースの歴史
はじめに、ショート動画の簡単なおさらいをしてみましょう。

そもそもショート動画が本格的に大ブームとなったのはTikTokからと考えて問題はないでしょう。古くは「6秒動画」として注目を集めたVineや、その機能を引き継いだ(Vineを買収した)Twitterの動画ツイート機能なども大きな話題を呼びました。

その人気を追うようにしてInstagramやYouTubeでも競合サービスが実装され、ミクチャのような新規アプリも登場し、そして現在若者を中心に圧倒的な支持を得るTikTokの大ブームへと発展します。

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Vineの登場は画期的且つ刺激的だった


VineやTwitterのショート動画投稿機能の時代から動画コンテンツによるコマースは広がりつつあったものの、その流れが確立したのはInstagramやミクチャあたりからだったように思います。

いわゆるインフルエンサーによる規格化されたショート動画は完成度も高く、商品アピールに非常に効果的です。また短い動画であるが故に観ているものに飽きられることがなく、瞬間的な「あ、コレ欲しい」という人のインスピレーションに訴えかける巧妙な編集にも感嘆します。

本連載コラムでも過去に動画によるコマース市場やライブコマースについて考察したことがありますが、撮影マナーへの諸問題やステルスマーケティングの問題など、新しいトラブルへの対策の必要性を感じつつも、市場としてのポテンシャルの高さには一定の評価を下すものでした。

【過去記事】秋吉 健のArcaic Singularity:嫌われ者?のライブコマース。新しいビジネススタイルに困惑する各業界とその問題点について考える【コラム】

■数字で見るショート動画とコマースの関係
それでは、現在のショート動画とコマースの関係はどのようなものになっているのでしょうか。

MMD研究所が4月に公開した「ショート動画とコマースに関する調査」によると、ショート動画で最も利用されているサービス(アプリ)は「YouTube ショート」で、「視聴のみしている」という純粋な視聴者の数は34.7%と、3人に1人はYouTube ショートを観ているという調査結果があります。

以下、同じく視聴のみで調べると「Instagram Reels」が18.0%、「TikTok」が17.0%と続いており、この3つのサービスが主要なショート動画サービスであると言えそうです。

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投稿のみや投稿と視聴をしている人の割合は、いずれのサービスもあまり大きな差がない


ショート動画で好まれているジャンルを調べてみると、男性の場合はスポーツや音楽への注目度が高く、それにニュース、コント・お笑い、ペット・動物などが続きます。女性の場合、ペット・動物と料理がトップ2で、そこに有名人・タレント、音楽、メイクといった項目が続きます。

家庭や職場、学校などでの男性同士や女性同士での話題と重なる部分が多く、生活に密着した内容の動画が好まれている傾向が見て取れます。

例えるならテレビメディア的な楽しみ方とも言え、エンタメ番組やテレビCMが世間の話題となることが多くあるように、ショート動画はエンタメ番組やテレビCM的な側面が強いようにも感じます。

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男性の3位がニュース、女性の3位が有名人・タレント、というあたりに不思議と納得感が強い


「ショート動画を視聴して商品を購入した経験」という調査項目を見てみると、男性も女性も3割前後の人が「購入したことがある」と答えており、コマース市場としての価値の高さが見受けられます。

日本民間放送連盟研究所が2022年7月に公開した「テレビの広告効果に関する研究」第2回調査結果でも、テレビCMの広告認知効率(CMを見て商品を購入したと考えられる割合)は42.9%、Youtubeの動画広告が20.1%であったことを考えると、30%前後という数字はかなり高い数字だと考えて良いと思います。

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3人に1人はショート動画を視聴し、さらにその中の3人に1人は商品を購入している。つまり9人に1人程度はショート動画を見て商品を購入しているということになる


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広告業界ではテレビCMと動画広告での役割の違いが認識されており、それぞれの市場に合わせた広告製作が重視されつつある


ちなみに「ショート動画を視聴して購入したもの」のランキングを見てみると、男女ともに食品、雑貨、日用品・文房具といった生活に密着したものが購入されており、ここでもやはりテレビメディアやテレビCMとの共通点が見えます。

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男性の場合「家電」が、女性の場合「化粧品」が上位にランクインするあたりも納得感がある


■不快感が少ない広告媒体としてのショート動画の価値
ショート動画自体、テレビCM的に次々と現れては消えていくサブリミナル的な印象が強い上に、当然ながら動画を視聴している時間(動画をスワイプするまでの時間)や「いいね」を付けた動画などがトラッキング情報として収集され、より個人の趣向にあった動画が流れやすくなる仕組みもコマース媒体としての相性の良さを物語っています。

また、YouTubeなどに唐突に挟み込まれる動画広告はひたすらに煩わしく人の反感すら買ってしまいがちですが、ショート動画の場合はそのような不快感が非常に少ないようにも感じます。

この不快感の少なさという点ではテレビCMよりも上ではないかとすら感じており、これらの理由をまとめると、

・動画広告と違い「観たいコンテンツ」に不意に挟み込まれるわけではないので楽しみを邪魔されたような不快感がない
・気に入らなければスワイプしてすぐに消せる
・動画のコメント欄で他の人の意見や商品に対する印象などをすぐに見ることができる(自分以外の人の意見を見て客観視しやすい)
・気に入らない動画に対しては低評価を付けるなどして不満を若干解消できる(吐き出せる)
・不快なコンテンツとして報告し続ければいずれは自分のタイムラインに表示されにくくなり、自然と自分の嫌いな動画ジャンルが減っていく

このような特徴が挙げられるのではないかと思います。

「ショート動画を見て商品を購入しようと思ったきっかけ」という調査結果を見ても、商品の映像や説明といった動画らしい表現手法が評価される中、「動画へのコメントの多さ」といった旧来からの口コミ的な情報を重視する人が27.1%も存在しており、第三者の評価が即座に見られることのメリットが感じられます。

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他人の評価がその場ですぐに見られる、という点はテレビCMや動画広告にはないメリットと言えるだろう


トップ画像に使用した小型マルチツールの数々は、まさにショート動画による広告を見て一目惚れし、衝動買いしてしまったオモチャたちです。とくにお気に入りのアイテムは、23種類ものドライバー類を内包したハンドスピナーです。

我ながら「こんな実用性皆無なシロモノをわざわざ買うとか馬鹿だよなぁ」と自嘲しつつも、執筆記事の内容を推敲している最中などに指先でクルクルと回してリラックスしていると案外良い言葉やアイデアが思い浮かぶことも多く、「工具としては精度も使い勝手もイマイチだけど気分転換用のフィジェットとしては超優秀だな」と、勝手に喜んでいたりします。

テレビCMにも言えることですが、広告というのは本来嫌われるべき存在であってはならず、視聴者が「お、これは面白そうだ」とか「これは使ってみたい」と興味を惹かれるものでなければなりません。

その前提において、これまでのウェブ広告やYouTube動画などに差し込まれる動画広告は、ひたすらに押し付けがましく邪魔な存在であったように思え、そのCMから「買ってみたい」と思わせるのは至難の業であったように感じます。

ショート動画によるコマースは、そういった邪魔な存在としての広告というイメージを軽減させる良いコンテンツではないかと強く感じる昨今です。

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今日もショート動画を観ながら指先でマルチツール・ハンドスピナーを回し、記事のネタを考えている


記事執筆:秋吉 健


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