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今やスマホには欠かせないSDカードの秘密 |
主にAndroidスマートフォンにおいて、写真や動画、音楽などを保存するために使われるメモリーカード。デジタルカメラや音楽プレーヤーなどを含めて「SDカード」と呼ばれる規格が広く活用されています。スマートフォンで使われるのはサイズの小さい「microSDカード」です。
ところでSDカードのロゴをしげしげと見たことはありますか? 今回の連載「スマホのちょっと深いとこ」はこのロゴに隠された「SD」誕生にまつわるトリビアを紹介します。知っていたからスマホが便利に使えるわけではないですが、これからの時期だと忘年会のネタ話くらいにはなるかもしれませんよ。
【メモリーカードなのにディスクのようなロゴ】
SDカードのロゴをよく見てみると、「D」の部分に丸い形状のデザイン意匠が見られます。切れ目は光っているようにも見えます。実際のSDカードは光ってもいないですし丸くもありませんので、メモリーカードを表すロゴとしては少々不自然です。
種明かしをしてしまうと、実はSDカードのロゴはもともとメモリーカードではなく光ディスクのためにデザインされたものなのです。
【SDカードのロゴはもともとDVD規格のためにデザインされた】
話は1990年代までさかのぼります。CDと同じサイズの光ディスクに映画などの動画を記録するDVD(Digital Video Disc)(*1)の規格が2種類提案されていました。片方がフィリップスやソニーが推すMMCD(Multimedia CD)、もう片方が東芝やパナソニックなどが推すSD(Super Density Disc)でした。
結局この規格争いはSDをベースに一部フィリップス・ソニーの主張を取り入れて「DVD」規格として統一されて終結しました。規格名自体が「DVD」(*2)となったため、SDの名前やロゴは光ディスクの規格名としては使われることはありませんでした。
その後東芝・パナソニック・サンディスクがSDカードの規格を定めた際に、光ディスクで使われなくなったSDのロゴが転用されました(*3)。そのためSDカードはメモリーカードなのにロゴデザインに光ディスクの意匠が残る結果となったのです。
*1: ここでいうDVD(Digital Video Disc)は「動画を記録できる光ディスク」という概念を表す名称で、特定の規格を指すものではありません。
*2: 概念の名前自体が規格名になったことになります。規格名としてのDVDは動画以外も記録することができるため「Digital Video Disc」ではなく「Digital Versatile Disc」の略とされています。
*3: SDカードの「SD」は、著作権保護機能を備えることになぞらえて「Secure Digital」の略とされる場合がありますが、ロゴが元々想定していたのは違う略語だったことになります。
【歴史的に外部からいろいろ取り込んで成長】
実はSDカードはロゴだけではなく様々な要素を外部から取り込んでいます。フルサイズSDカードの形状はもともとサンディスクのマルチメディアカード(MMC)をベースにしていますし(*4)、スマートフォンでよく使われるmicroSDカードは、サンディスクのトランスフラッシュと呼ばれるメモリーカードが起源です(*5)。
*4: SDカードスロットにはMMCも挿入可能な互換性があります。SDカードの方が少し厚みがあるため逆(MMCスロットにSDカードを挿入)はできません。
*5: トランスフラッシュとmicroSDは名称が違うだけで本質的に同じものです。
このように必要に応じて外部からの規格を取り込んできた柔軟性が、SDカードを事実上の標準足らしめているのかもしれませんね。
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