入浴中のスマホ利用のリスクについて考えてみた!

みなさんはお風呂に入っている時にスマートフォン(スマホ)やタブレットなどで音楽を聴いたり動画を鑑賞したりするでしょうか。最近では比較的当たり前となったこういった習慣も、ほんの十数年前まではほとんどの人がしていなかったと考えると感慨深いものがあります。

しかしながら、お風呂にスマホなどを持ち込むことは故障のリスクが高く、多くのメーカーが推奨していません。これを聞いて「え、でも“防水”って書いてあるよ!?」と思う人もいるかもしれませんが、防水仕様であってもお風呂に持ち込んで故障しない保証はないのです。

なぜ防水に対応した製品をお風呂に持ち込んではいけないのでしょうか。またお風呂で音楽などを楽しみたいときはどうすれば良いのでしょうか。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はスマホとお風呂の微妙な関係について解説します。

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お風呂を快適なリラックスタイムとするために


■厳格に定められている防水規格
はじめに、スマホやケータイに書かれている「防水」の意味と仕様について解説しておきましょう。

スマホを含めた家電製品で扱われる「防水」とは、国際規格(IEC)や日本のJISで定められた規格(電気機械器具の外郭による保護等級)に基づいて記載されます。

例えば日本で販売されているスマホには「IP56」や「IP67」といった表記が多いかと思います。

これは「外来固形物に対する保護等級と、危険な箇所への接近に対する保護等級(いわゆる防塵性能)」と「水に対する保護等級(いわゆる防水性能)」をまとめて記載したもので、「IP」に続く1番目の数字が防塵性を、2番目の数字が防水性を表しています

各等級の詳細は省きますが、例えばiPhoneシリーズの場合、iPhone 7以降はすべて「IP67準拠」以上の性能となっています。これは、

・IP6X……防塵性において「完全な防塵構造/粉塵の侵入が完全に防護されている」を認むもの

・IPX7……防水性において「水面下・15cm~1m、30分間で水中に没しても水が浸入しない」を認むもの


※「X」とは未定義を指す


こういった性能を有していることを示しています。

つまり、40度近い「お湯」に浸すことは想定しておらず、防水規格としてはテスト項目に入っていないものだからメーカーは基本的に推奨しないのです。

また、真水に30分間「浸しているだけ」を想定した規格であるため、水中でボタンを押したり画面を操作するなどの動作保証をするものではありません。飽くまでも「静かに水槽の中に30分沈めていても壊れませんよ」というだけの性能規格なのです。

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ましてや海水で濡れる場所での利用などほとんどのスマホが保証対象外だ


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AppleはiPhoneの防塵・防水性能について公式サイトで詳細を公開している(引用元


もちろん、塩水に浸けたり石鹸で洗っても大丈夫というスマホはあります。

そういった場合はメーカー独自で規格を作り、数多くの独自テストを行った上で「塩水にも耐えられます(※塩水中で使えるとは言っていない)」、「ハンドソープで洗っても大丈夫です(※洗浄中に使用して大丈夫というわけではない)」と、改めて宣伝しているのです。

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最近はハンドソープで洗えるスマホも増えてきた


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京セラのタフネスケータイ「G'zOne TYPE-XX」のように塩水耐久試験をクリアしている機種もあるが、それでも海中での利用を保証するものではない


■意外と知られていない「結露」の怖さ
それでは、実際にスマホをお風呂で使った場合のリスクとはどういったものがあるでしょうか。真っ先に思いつくのは内部への浸水ですが、実はそれよりもずっとリスクが高い問題があります。それは「結露」です。

防水スマホの内部へ直接水やお湯が入ることは稀ですが、入浴中などはスマホ内部と外側の温度差や高い湿度環境から結露が発生しやすくなっています。

寒い冬に湿度の高い部屋で暖房をつけていると窓の内側が濡れてしまう現象とまったく同じです。

結露はスマホ内部で空気中の水分が液体になる現象であるため防ぎようがありません。これによって内部の基板が腐食したり、カメラのレンズが曇ってしまうことが多々あります。場合によっては電子回路がショートして故障したり、バッテリーが発火・爆発するリスクもあります。

とくにスマホが動作している状況では、内部の基板やバッテリー周辺が熱く外装が室温や水滴などで冷やされている状況が発生するため、ますます内部結露のリスクが上がります。

お風呂場に限らず、湿度の極端に高い場所での利用はできる限り控えることが重要です。

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スマホは極力水場を避けて利用したい


「お風呂でスマホを使えないなら防水なんて意味がないじゃないか」と憤慨する人もいることでしょう。

基本的にスマホやケータイの「防水」とは「万が一濡れた場合でも故障しません」という最低限の保証であり、どんなに防水を謳っている機種であろうと原則としてお風呂で使ってはいけないものなのです。

それでは、お風呂で音楽などを楽しみたいときはどうすれば良いでしょうか。筆者のオススメはお風呂用として販売している防水スピーカーの利用です。

防水スピーカーにもお風呂利用を推奨しないものが多数あるため購入の際には十分に注意が必要ですが、正しく機種を選択すれば非常に快適なバスタイムを楽しめます。

筆者はガラケー時代からBluetooth接続のお風呂スピーカーを愛用しており、現在使っているスピーカーも使い始めて7~8年になります。ワイヤレススピーカーであれば万が一故障してしまってもリスクが低く、価格も数千円程度と安価であるため買い替えが容易です。

お風呂で動画を楽しみたい人向けにお風呂用の防水ケースなどもありますが、結露のリスクを完全には拭えないためあまりオススメできません。入浴中の動画視聴は避けたほうが良いでしょう。

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筆者愛用のお風呂用スピーカー。LEDでライトアップしつつ湯船に浮かべて楽しめるのが特徴の素晴らしい製品だが、現在は生産終了してしまっている


■正しい知識でスマホを長く快適に使おう
日本でもまだ携帯電話の防水機能などが珍しかった時代、筆者のライター仲間がおもむろに冷水の入ったビールジョッキに携帯電話をドボンと入れ「このケータイ防水なんですよ!」と自慢した直後、携帯電話内部が即座に結露して故障してしまったという笑えない笑い話があります。

あれから12~13年ほど経ちますが、未だに「防水のはずのスマホがお風呂場で使っていたら壊れた」、「スキー場でスマホを使っていたらカメラが曇って直らなくなった」といった報告をSNSなどで頻繁に目にします。

スマホは非常に高度で高価な精密機器です。その構造も精密で防塵・防水対策はしっかりと行われていますが、正しくない使い方やメーカーが想定していない使い方をした場合のリスクはすべて自己責任となります。

どのような使い方だと故障しやすいのか、どうして故障してしまうのかを正しく知り、大切なスマホを長く快適に利用したいところです。

お風呂場にスマホを持ち込むのは、ディスプレイ保護フィルムを貼るときだけにしたいですね(お風呂場は一般家庭で一番ホコリが少ない場所なので保護フィルムを貼るのに最適です)。

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よいこのみんなはぜったいにマネしないでね!


記事執筆:秋吉 健


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