噂の格安UMPC「NANOTE NEXT」のチェックしておきたいポイントを解説!


ディスカウントストアチェーンのドン・キホーテは自社のプライベートブランド「情熱価格」にて7インチディスプレイ搭載ウルトラモバイルパソコン(UMPC)「NANOTE」シリーズの新製品「NANOTE NEXT(ナノート ネクスト)」(型番:UMPC-03-SR[SILVER])を店頭販売を2022年5月16日から開始しています。店舗上限価格(ドン・キホーテなどのPPIHグループで販売される場合の最大価格)は税込32,780円。

モバイルPCとしては本体価格が比較的高額になることの多いUMPCというジャンルのノートPCにおいて、3万円ちょっとで購入可能という非常に安価であることから、新作が登場するたびに話題に上るNANOTEシリーズの2022年モデルのNANOTE NEXTですが、安価であるゆえに性能や仕様面においてもかなり割り切ったマシンとなっています。

これまでに、本機の開封・外観のレポートベンチマークやゲームなどで性能をチェックするといった記事をお送りしてきましたが、今回はNANOTE NEXTを実際に使っていて気が付いたポイントをまとめて解説しようと思います。

【NANOTE NEXTの良いポイント】

・本体の電源周りの仕様改善
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PD対応で汎用の充電器も使えるようになったのは大きい

前モデルNANOTE P8最大の失点要素だった「付属の専用充電器でしか充電ができない」という点が解消されたのは一番大きい点でしょう。NANOTE P8付属の充電器はUSB Type-C型ではありますが、USB Implementers Forumの策定した規格外の仕様で、12V/2.5A/30Wの電気を送り続けるという、うっかり他の端末の充電に流用してしまうと、機器の破損の危険性があるものでした。(そして、NEXTの付属の充電器も30Wの表記はありませんが、USB PDの仕様外なので他の機器への充電はしない方がいいでしょう)

なお、NANOTE NEXTの充電は出力12V/2.0A以上の出力に対応したUSB PD対応の充電器に対応しています。(筆者の手元にあるHP製ノートPC用のUSB PD充電器やAnker製のUSB PD充電器にて充電がされているの確認済)


・本体ストレージがSSDになったことでストレージ拡張(SSD換装)が可能
NANOTE NEXTはシリーズで初めて本体ストレージにSSD(M.2 SATA 2242規格)を採用しており、CPUが変更された点以上に全体的な動作速度の底上げに貢献しています。とはいえ、その容量は64GBと現行のWindowsマシンとして必要最低限なうえ、搭載しているSSDの性能自体もそれほど高いものではありません。

ドライバのバックアップ、あるいはOSの再インストールなどの作業が必要にはなりますが、SSDを上位のものへと交換して本体ストレージの容量や全体的な動作快適性の(僅かながらも)向上を狙うことができます。SSD換装の注意点としては、M.2 SATA 2242規格を選べばいいのですが、基盤が片面実装になっているかチェックしておきましょう。両面実装のものだと、物理的に干渉してうまく接続できない可能性があるので注意してください。

規格に合う片面実装のM.2 SATA 2242のSSDの例としてトランセンドの「430S」(128GB/256GB/512GB)などが該当します。


機動力の高いNANOTE NEXTで、本体ストレージ容量に余裕があれば一気に実用度もあがるので、データのバックアップや復元など作業が発生しますが、是非オススメしたいところです。

M.2 2242規格のSSDはPCパーツを取り扱っている電気店や量販店、ECサイトなどで比較的簡単に購入できるので、自身のある方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。


・サブマシンに便利な取り回しの良さ
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気軽に持ち歩けるコンパクトさこそUMPCの本骨頂

NANOTE NEXTに限らず、UMPC全般に言えることですが、手軽に持ち歩ける大きさと軽量さは大きな魅力です。メインマシンとして使うにはかなり非力ではありますが、非常時のサブマシンとして、Officeファイルのちょっとした修正などをサッと取り出してできるのは大変に便利です。

割り切った性能なので多彩な芸当をこなすことはできませんが、予備機として動作設定を見直し、カスタムすることでローエンドマシンながら、それなりに使っていける1台になりえると思います。


【NANOTE NEXTのいま一つなポイント】

CPUやメモリー、ストレージ以外の基本性能が非常に低い
初代と比較すれば、CPUはAtom系のCPUながら、Pentium J4205となり、ストレージは32GBだった初代から64GBへと、大幅に向上しています。一方で、インカメラの有効画素数が約30画素のまま。また対応microSDカードの最大容量も256GBまでと初代NANOTEから変わっていません。

さらに無線LAN(Wi-Fi)やBluetoothの規格も初代・P8から据え置きのままで、Windowsのアップデートなどに大変な時間がかかっています。ただし、この点についてはUSB接続の無線LAN/Bluetoothドングルを使うことで(方法としては若干、強引ではありますが)解決することはできます。

・Windows11へのアップグレード非対応
(少なくとも本記事の執筆時点では)NANOTE NEXTのCPU(Intel Pentium J4205)はマイクロソフトの公開しているWindows11の正規対応CPUのリストには掲載されておらず、OSのアップグレードを行うことはできません。実際にマイクロソフトの配布している「PC 正常性チェック アプリ」で試してみたところ、CPUが非対応で、(正規の手段では)アップグレードができないことが確認できました。
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Windows11へのアップデートには世代が一つ届いていない・・・

つまり、本機の製品寿命は米国時間の2025年10月14日(マイクロソフトがWndows10向けに設定している延長サポート期間)まで、ということになります。

とはいえ、ほぼ1年ごとに新モデルが登場している安価なマシンなので、そこまでOSのメジャーアップグレードに入れ込む必要はないかもしれません。(わかる人は、その上で色々と試すと思われますし)


・排熱がうまくされず、パフォーマンスが低下する
ベンチマークアプリや大規模なOSのアップデート、負荷の高いゲームコンテンツなどを動作させていると、その部分を保持して持っていられなくなるほど、本体(特に底面付近)が発熱し、動作パフォーマンスが目に見えて低下することがあります。

これについては複数の理由があり、一つは「CPUが超低消費電力設計のCherry Trail世代のAtomだった初代NANOTEと違い、通常のモバイル向けCPUを採用していること」、「にもかかわらず、ファンレス設計のため熱がこもる」、「さらには本体内側の放熱板が、熱伝導シートなどで接触しておらず、熱が外部に逃しにくい設計になっている」などの原因があげられます。特に、先代のNANOTE P8、初代NANOTEの両方は本体内部の放熱板に熱伝導シートがついていたものがなくなっており、放熱性能においては低下していると思われます。(そして、CPUの温度が上がってパフォーマンスが低下している)

そして、実はわりとこの3つが複合しているのが、本機の性能発揮の面において「かなり致命的」で、スマホやパソコンは、なるべく本体内の熱を外に逃がすことが端末のパフォーマンスを落とすことなく動作させる基本となります。にもかかわらず、NANOTE NEXTは「(初代NANOTE比で)熱源(CPU)が強くなったのに排熱性能が(NANOTE P8より)低下」というもったいないことになってしまっています。

解決、というか対処法としては「NANOTE NEXTの底面カバーを外し、放熱板に熱伝導シートを貼り付けて熱を効率よく底面側へ逃がすようにする」、「画面解像度を落として負荷を下げる」などでしょうか。
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NANOTE NEXTの底面カバーを外したところ。矢印の金属部分が放熱板で、ここに熱伝導シートを貼ることで放熱性が多少改善します。

放熱のため、本体底面側の熱くなるので、ノートPCやタブレット用のスタンドを併用すると、更に効果的です。

安価で小型なWindoiwsPCというユニークなマシンのNANOTE NEXTですが、本機をじっくりと楽しむにはひと手間とその手間を楽しむくらいのほうがいいかもしれません。


・キーボードの形状と配置に強いクセがある
NANOTEシリーズのPC全般に言えるのですが、日本語キーボードに比べて少なめのキー数になっている英字キーボードに、やや強引に日本語のキーボード配置とキーアサインを行っているため、クセの強いキー配置となっています。そのため、慣れに少々時間がかかるかもしれません。
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NANOTEシリーズを通してクセのある配置のキーボード



・まとめ:基本スペックから考えるとコスパは抜群
NANOTEシリーズのUMPCは性能や仕様の一部を低スペック・ローコスト・旧世代(CPUや無線機能など)のものを実装することで低廉な価格を実現しています。

値段こそ絶対!とは言いませんが、それでもUMPCという少数派向けな小型PCがこの値段なのはやっぱり驚異的です。3代目のNEXTとなって強化されている点もありますが、まだまだ足りない部分やツメの甘さも見られるのも確かです。

しかし、SSDの換装や熱伝導シートの実装、パフォーマンスの調整など、いじりがいのあるマシンであることも間違いないと思います。

UMPC機の入門に!とは言いづらいのですが(汗)、安価に手の出せるちょっと慣れた人へのホビーマシンとしては本当に面白い一台ですよ!


ちなみに大変コンパクトなので、なんならズボンのお尻ポケットに入れることだってできますよ(汗)

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別に、なにかのネタだとか、そういう他意はありませんとも・・・(たぶん)



記事執筆:河童丸


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NANOTE NEXT製品情報(ドン・キホーテのWebサイト)