2015年はLenovoのスマホに大注目!

2014年の世界のスマートフォン(スマホ)市場は上位2社(SamsungApple)がシェアを減らし、3位以下のメーカーが存在感を高めた年だった。急成長を遂げたXiaomi(シャオミ、小米科技)、着々とラインナップを増やすHuawei(ファーウェイ、華為技術)など中国メーカーの勢いは2015年も続きそうだ。

その中でも一歩抜け出そうとしているのがLenovo(レノボ、联想集团)である。PCの世界では今や堂々の世界シェア1位になっているLenovoだが、次のターゲットはスマホの販売数拡大であり、シェア3位グループから抜け出し、2位そして1位の座を虎視眈々と狙っている。

Lenovoの決算報告によると、スマホの出荷先は今や45カ国に広がっている。2014年第2四半期のスマホの出荷台数は前年比で約4割も伸びており、堅調な中国はもとより中国外でも成長は著しい。例えば、東南アジアとロシアでは前年比400%、4倍もの出荷数となった。インドでも120%増加、ラテンアメリカとEMEA(ヨーロッパ中東アフリカ)でも150%増と好調な動きを示している。

15lenovo025つのラインナップでグローバル展開を図る

Lenovoのスマホは2014年9月に発表されたハイエンドの「Vibe」シリーズを筆頭に、ミドルレンジモデルやエントリー系の低価格な製品も多数のラインナップを揃えている。シリーズ展開はきっちりと5つに区分されているが、Vibeの強化とAシリーズの拡充で、KとPの両シリーズは若干位置づけが変わりつつある。

【Lenovoスマホのラインナップ】
 Vibeシリーズ:最新技術搭載のハイエンド
 Kシリーズ:高デザイン&ハイスペック
 Sシリーズ:スタイリッシュ
 Pシリーズ:幅広い層向けのビジネス需要にも応じる製品
 Aシリーズ:格安スマホを含むコストパフォーマンスモデル

Lenovoの顔となったVibeシリーズは高スペックなSoCや高解像度ディスプレイを搭載、先進国でも十分に戦えるモデルでもある。とはいえ、Lenovoのスマホとしてのブランド認知度はまだ低く、ハイエンドモデルは中国外では苦戦しているのが実情だ。しかしながら、他社の上位モデルと互角に戦えるだけの製品を開発できるだけの能力を持っており、今後ライバル製品として頭角を現してくことだろう。
15lenovo03Snapdragon801、2Kディスプレイ、16メガカメラのVibe Z2 Pro


このハイエンドなVibeシリーズに対し、Kシリーズは位置づけがあいまいなものになっていた。スタイリッシュなSシリーズがデザインに特化した女性向けモデルを次々に投入、Kシリーズの元々の存在意義はVibeシリーズとSシリーズへと分散吸収されるような状態になっていた。ところがLenovoは2014年12月に突如低価格でスペックが高く、そして黄色いカラーが目を惹く新製品を中国で発表した。それが「楽檬」こと「Lenovo K3」(以下、K3)だ。
15lenovo04低価格で高性能しかも黄色い華やかなボディーが目を惹くレモンスマホことK3

「楽檬」は英語のLemonをそのまま音読みした中国語に近い。黄色いボディーもレモンをイメージしたものであり、このK3の愛称は日本語で言えば「レモンスマホ」なのだ。

中国では今や1万円前後の低価格LTEスマホを各社が続々とリリースしているが、このレモンK3はそれらの中でも本体のカラーリングで差別化に成功し大きな注目を浴びている。

スペックもSocはMTKではなくQualcommの「Snapdragon 410」を採用、5インチHD(720×1280ドット)ディスプレイに8メガカメラで599元(約1万1,600円)と抜群のコストパフォーマンスを誇る。もちろんLTEにも対応する(現在はTD-LTE、追ってFDD-LTE版が登場予定)。
15lenovo05豊富な格安スマホのAシリーズ

K3はスペックは1年前のものだろうが、価格とデザインを考えると先進国でも十分通用する製品に仕上がっているのではないだろうか。日本のSIMフリー市場にもこのままこの値段で登場したら大きな話題になるだろう。LenovoはこのK3以外にもAシリーズで1万円前後のスマホを多数リリースしており、東南アジアなどでは大人気だ。安いだけではなくデザインもよいK3は今後カラバリや機能のバリエーションモデルを出していけば「Lenovoのレモン」として、ひとつのブランドを築き上げるかもしれない。日本でも是非、VibeシリーズとともにこのK3を出してもらいたいものだ。

そして、もうひとつ、Lenovoの躍進が期待できるのはMotorolaの買収効果だ。GoogleがMotorolaの携帯電話部門を買収した2012年以降、Motorolaは少数精鋭のスマホメーカーとして「ハイスペック」「高デザイン」「低価格」と特徴的な製品を定期的にリリースして来た。アジアやヨーロッパでは製品数の減少と他メーカーの攻勢によりブランド力を落としているものの、北米や南米では今でもその人気は高い。何と言ってもMotorolaの「M」のロゴには長い歴史があり、このロゴの付いた製品を見るだけで安心と信頼を感じる人も多いだろう。
15lenovo06Motorolaを手に入れたことで、Lenovoの国際展開が加速する

現在のMotorolaのスマホはハイエンドの「Moto X(2014)」とミドルレンジの「Moto G(2014)」、それにエントリーの「Moto E」というラインナップだ。この他に地域モデルなどもあるが機種の種類は少ない。だが、日本でも販売されているGoogleの「Nexus」シリーズの最新モデル「Nexus 6」はMotorola製となった。そのMotorolaをLenovoが買収したことから、今後のNexusシリーズをLenovoが手掛ける可能性も出てきている。LenovoにとってMotorolaの買収は、Googleとの関係強化という面でも大きなメリットがある。

そして、2004年にIBMからThinkpadを買収して以降のLenovoの動きを見れば、2つのブランドを存続させながら国際展開と製品バリエーションの拡大を図った同社の戦略は成功をおさめ、冒頭で述べたように今やPC世界No.1に上り詰めている。ちなみにPCとタブレットの合計でもLenovoのシェアは世界1位だ。世界中の家電量販店やPCショップでLenovoの売り場を見ないことはない。その売り場にLenovoのスマホを置くだけでもすぐに国際展開は可能だろうが、そこにMotorolaというブランドの知れ渡っているスマホを同時に置けば消費者の注目を集めることはたやすい。LenovoのPCだけでは人を呼べなくともThinkPadと同時に陳列したことで集客を図ったPCのマーケティングと同じことがこれから各国で展開され、その成果は成功を収めることであろう。

通信キャリアにとってもMotorolaブランドとLenovoの豊富な製品ラインナップは大きな魅力だ。メーカーとしてのサービス拠点もすでにPCの販路を通じて各国に展開されている点も、キャリアとして販売しやすい。2015年はLenovoのスマホが先進国でもメジャーになる年になるだろう。

記事執筆:山根康宏


■関連リンク
エスマックス(S-MAX)
エスマックス(S-MAX) smaxjp on Twitter
S-MAX - Facebookページ
【山根康宏の“世界のモバイル”特集!世界のスマホ事情がすぐわかる】 - S-MAX
山根康宏オフィシャルサイト - 香港携帯情報局