ソニーモバイルのAIコミュニケーションロボット「Xperia Hello」体験会レポート! |
既報通り、ソニーモバイルコミュニケーションズ(以下、ソニーモバイル)は17日、都内にて「スマートプロダクトの新製品に関する体験会」を開催し、音声認識型コミュニケーションロボット「Xperia Hello!」を発表しました。発売予定日は2017年11月18日(土)、価格はオープン価格ながらも希望小売価格および「ソニーストア」で149,880(税別)となっています。
スマートフォン(スマホ)などでの音声認識技術による検索機能や生活サポート機能に端を発する音声アシスタント技術は現在、Googleの「Google Home」やAmazonの「Amazon Echo」、LINEの「Clova WAVE」、そしてAppleの「HomePod」など、さまざまな製品やプロダクトを生み出しつつあります。
今回発表されたXperia Hello!もまた、これら音声アシスタント技術を活かしたプロダクトに分類されるであろう製品であり、一般的に「AIスピーカー」や「スマートスピーカー」と呼ばれる製品の一群と捉えられることが多くあります。
一方で今回の発表会では、Xperia Hello!をこういった単なるAIスピーカーやスマートスピーカーの分類に区分させたくないという同社の思惑も多分に読み取れました。同社はこの製品をどのように位置付けし、どう活用させていく戦略なのでしょうか。本発表会の模様やXperia Hello!の仕様を追いつつその戦略について解説・考察します。
なお、本製品の詳細な性能や機能についてはこちらの記事をご覧ください。
■Xperia Hello!は「人と人とをつなぐ」ロボット
Xperia Hello!の製品としての位置付けを考える時、そのボディに搭載された大きな画面の存在は、まず語らなければいけない大きな特徴です。
Google HomeやAmazon Echoなどが音声認識によるコントロールによって家庭内の電子機器を制御したり人のアシスタントとして機能することを大前提としているのに対し、本機では「画面を使ったコミュニケーション」が大きなウェイトを占めています。
画面には天気予報やニュースを表示するなどスマホ的な使い方が出来るのは当然のこと、「◯◯さんに動画を送って」と頼めば内蔵されたカメラでユーザーを撮影して相手に送信したり、相手からの動画を受け取ってそのまま再生させたりできます。またSkypeやLINEを利用してダイレクトにビデオ通話も可能です。
つまり本機があるべきポジションは、他社のAIスピーカーのようなユーザー1人に対しての音声アシスタントロボットではなく、家族や友人、そしてビジネスの場でも利用可能な、「人と人とをつなぐ」対人コミュニケーションをアシストするためのロボットなのです。
そのコンセプトのために本機には4つの人感センサーや7つの指向性マイクが搭載され、カメラによる画像認識技術によって人の存在や誰がそこに居るのかを判断し、それぞれのユーザーに対して話し方や話題も変えるという「応答生成技術」も採用されています。
また、人とのコミュニケーションを重視しつつもプライバシーやセキュリティーへの配慮も見られます。一般的な音声認識技術の場合、入力された音声はオンライン上のサーバーで処理されその返答内容が端末へ返されますが、この方式の場合通信ラグなどが発生するため応答速度が若干遅くなる傾向があります。
そこでソニーでは音声認識技術をオフライン化し端末内で処理することで素早い応答を実現。また端末内で音声認識や画像認証が完了するためにオンライン上へこれらのデータが送信されることはなく、プライバシーやセキュリティー面でも安心と安全を確保しやすい点がメリットであると強調しています。
一方で、すべての処理をオフライン化するためにAIアシスタントとしての機能はある程度限定せざるを得なかったと開発室室長である倉田氏は語ります。音声認識の基礎技術に関しては十分な性能に達していますが、ユーザーそれぞれを認識した会話内容の学習やその学習効果による知識の蓄積などはオミットされており、飽くまでも「ユーザーが発した言葉を記録し、その言葉に応じた会話を行う」という最適化に留めています。
本機による対話応答や利用シーンのデモなどは以下の動画からもご覧いただけます。
S-MAX:「Xperia Hello!」体験会・プレゼン動画
動画リンク:https://youtu.be/sppAacMuMiY
■めざすは「ポスト・ペッパー」?ビジネス活用も積極的に模索するXperia Hello!
本機のコンセプトが「人と人をつなぐコミュニケーションロボット」であることから、介護・福祉や一般オフィスなどでの利用なども積極的に検討されています。
例えば老人介護施設などではユーザー自身の見守り機能や簡単な話し相手としての機能に加え、離れて暮らす家族とのコミュニケーション手段としての活用が見込まれます。またオフィスではインフォメーションアシスタントとして配置することで来客の誘導や入場時の認証、施設の利用案内などを行わせることが可能です。
こういったインフォメーションアシスタントとしての機能を持つロボットとしては、日本ではソフトバンクロボティクスの「Pepper(ペッパー)」が先行して導入されてきた実績があります。Pepperもまたオフラインでの対話応答や施設案内、認証などが可能なほか、オンラインに接続すれば人間による遠隔端末としても機能し、オフィス以外にもホテルのコンシェルジュなどとして利用され始めています。
また担当者によれば、B to B to Cの活用例としてネスレ製コーヒーマシン「バリスタi」と本機をBluetooth通信で接続し、音声案内によるカフェサービスなども検討したことがあったとのことで、こちらも今夏にソフトバンクがPepperによる試験導入がを行っていることなどからも、本機の立ち位置はAIスピーカーよりもPepperのような音声アシスタントロボットに近いものと考えて良さそうです。
■Xperia Hello!は人の心を伝える道具になり得るか
その大きさやデザインなどからAIスピーカーやスマートスピーカーと呼ばれる製品のジャンルだと考えがちなXperia Hello!ですが、その製品コンセプトは前述のようにむしろPepperに近く、コミュニケーションロボットとしてより身近に利用できるサイズとデザインに昇華されているという印象でした。
特に「人間同士を繋ぎそのコミュニケーションを行う手助けをする」という存在に特化するという方向性は、他社のAIスピーカーやロボット製品にはあまり見ないコンセプトでもありソニーモバイルらしさを強く感じます。
一方で、約15万円という価格への抵抗感も少なくないものと思われます。各種センサーや動きによる感情表現、高度な音声認識技術など最先端技術の塊である点を考慮すれば、ビジネス用途であれば妥当な金額とも取れますが、一般家庭用のデバイスとしては導入に躊躇する価格かもしれません。
同社としては本機はコミュニケーションロボット事業を進める最初の一歩であると位置付けており、本機の使用感などのフィードバックを受けて更なる製品開発や企業向けとしてのカスタマイズなどを進めていきたいとしていることからも、多分に試験機としての意味合いもあるものと思われます。
Xperia Hello!がソニーモバイルとしての新たなロボット事業の礎となるのか、今後の展開に注目が集まります。
■関連リンク
・エスマックス(S-MAX)
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・‟家族の一員”として日々の暮らしをアシストするコミュニケーションロボット Xperia Hello! 発売 | ソニーモバイルコミュニケーションズ
・Xperia Hello!(G1209) | Xperia(TM) Smart Products | ソニー