スマホの重さについて考えてみた! |
みなさんは、自分が使っているスマートフォン(スマホ)がどのくらいの重さか知っていますか?恐らくその正確な数字(公称値)を記憶している人はほとんどいないでしょう。かくいう筆者もモバイルライターでありながら、愛用のアップル製「iPhone 11 Pro」の重さは公式サイトを見に行かないと分かりません。
というわけで今確認してみたところ、なんと188gもあったようです。かつては130g台や140g台だったiPhoneも随分と重く、大きくなったものです。みなさんがお使いのスマホも年々重くなってきているのではないでしょうか。
そんな大型化と大質量化が進むスマホですが、実は昨年あたりから若干風向きが変わってきています。スマホが軽くなり始めたのか、それともさらに大型化と大質量化が加速したのか。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はスマホの重さと利便性について考察します。
■スマホの重さは軽視されがち?
まずはスマホの最新トレンドについて調べてみましょう。
KDDIが2018年2月に行ったアンケート調査「スマホを選ぶポイントランキング」によると、スマホを購入する際に重視するポイントとして、「スマホの軽さ・薄さ」は9項目中8番目となっており、あまり重視している人がいないことが分かります。
その内訳を見てみると、年齢が上がるほどに重さを重視する人の割合も増えていきますが、それほど顕著な増加はなく、やはりスマホの重さを気にしている人が少ない印象です。
バッテリーの持ちや画面の大きさを重視する人の割合が多いことからも「端末が多少重くなってもいいからバッテリーの持ちが良いほうがいい」や「画面が大きく見やすいなら多少重くても良い」と考える人が多いとも言えます。
スマホメーカーの宣伝やアピールポイントを見ても、性能や機能に比べて重さにこだわる企業や商品が少ないこともユーザーニーズに敏感なメーカーの反応としては非常に分かりやすいところです。
例えば、京セラなどは10年近く前から「DIGNO」シリーズや「URBANO」シリーズで軽さをアピールしてきましたが、その軽さが決め手となって購入したという人はそれほど多くないと、展示会などで担当スタッフから話を聞いたこともあります。
■軽さのために性能で妥協する時代は終わった
このように他の要素と比較してあまり重視されることのない重さですが、一昨年にシャープが「AQUOS zero」を発表したことで若干風向きが変わってきました。そして、昨年にはその後継となる「AQUOS zero2」が発表されました。
通常、軽さをアピールするスマホは画面が小さめ(スマホ自体が小さめ)、バッテリーが少なめ、性能は控えめなど、さまざまな点で妥協したスペックとなります。ところがAQUOS zero2では約6.4インチの大画面、3130mAhの余裕あるバッテリー容量、SoCにQualcomm製ハイエンドチップセット(SoC)「Snapdragon 855」を採用するなど、一切妥協しないままに質量を約141gに抑えてきたことで大きな衝撃を与えました。
その衝撃の度合は、6.4インチディスプレイのスマホの見た目から想像される重さと実際の重さがあまりにも違いすぎて「あれ!?え!?」と脳が混乱するほどです。
また先日発表されたソニーの「Xperia 10 II」は約6.0インチの有機EL(OLED)FHD+(1080×2520ドット)ディスプレイを搭載し、SoCとしてQualcomm製「Snapdargon 665」を採用、背面に耐衝撃性の高いコーニング製「Corning Gorilla Glasss 6」を採用、さらにトリプルカメラに強化するなど、デザイン的な高級感も追求したミドルハイクラスの端末ながら、質量約151gとかなりの軽さを実現しています。
前機種となるグローバルモデル「Xperia 10」が約162g、日本で発売されたミッドレンジモデル「Xperia 8」が約170gであったことを考えると、性能やデザイン性を向上させつつ軽量化を図ってきた点に、メーカーが端末の重さを重視し始めたことが感じられます。
何より驚くべきはXperia 10 IIでは、この軽さで3600mAhもの大容量バッテリーを搭載している点です。もはや「バッテリーの持ちが良いなら重くても仕方がない」とか、「軽いスマホが欲しいなら性能で妥協しないといけない」と考える時代ではなくなったのです。
■重すぎる端末は健康被害の原因にも
このようにメーカーが軽さに注目し始めたのには理由があります。それは「スマホが重くなりすぎた」からです。
冒頭でiPhone 11 Proの質量は188gと書きましたが、実はこれでも「平均的な重さ」なのが、現在のハイエンドスマホのトレンドです。昨今のハイエンド機種は大型の姉妹機が用意されることが多くありますが、iPhoneの場合も「iPhone 11 Pro Max」があり、こちらはなんと質量が226gもあります。
iPhoneだけではありません。サムスン電子製「Galaxy Note10+」は約197g、ファーウェイ製「HUAWEI P30 Pro」は約192g、ソニーモバイルコミュニケーションズ製「Xperia 1 II」は約181gです。他のミドルハイ~ハイエンドクラスのスマホも同様の重さで、手に持った瞬間に「お、ちょっと重いな」と感じられるものがほとんどです。
いくら重視されない要素だとは言え、保護ケースや手帳型ケースを装着して200g以上にもなる端末を持ち歩くのは結構な負担です。iPhone 11 Pro Maxのような端末ともなれば、手帳型ケースを付けると250gすら超えます。もはや小型のタブレットを常時携帯しているのと大差ありません。
スマホの大質量化は、腕の疲れやしびれ、肩こりなどの原因ともなっており、健康への影響も懸念されるようになりました。昨今のスマホではヘルスケア機能の充実が大きくアピールされているのに、そのスマホを利用することで頭痛や血行障害などを引き起こしてしまったのでは本末転倒です。
例えば、iPhoneシリーズも「iPhone 8」などは当時ハイエンド性能ながら148gと非常に扱いやすい軽さでした。サムスン電子製「Galaxy S10」も発売からまだ1年以内のハイエンドモデルですが、約158gと比較的軽量です。
これからのハイエンドモデルは、性能を引き上げつつも質量を150~160g程度には抑えていく必要があるのかも知れません。
■大画面スマホの時代だからこそ、気にしたい「重さ」
KDDIの行ったアンケート調査を再び振り返ってみれば、第1位には「操作のしやすさ」がランクインしています。重さや薄さはあまり重視しないという結果でしたが、よくよく考えてみれば、重い端末が操作しやすいはずがありません。
画面(ディスプレイ)の大きさよりも操作性を重視している人が2倍近くも多いことからも、片手での操作感や取り回しの良さのほうが重要であることは間違いないでしょう。重さはそこに大きな要素としてかかってくるものだと思います。
これまでスマホは大画面化と大質量化を伴いながら性能を進化させてきましたが、その恐竜的進化もそろそろ限界です。いくら大画面が良いとは言っても、7インチや8インチのスマホが欲しいわけじゃありません。
ましてや、これからのスマホはゲームプレイや動画視聴を重視したスペックと通信回線の時代となります。片手でほんの数分SNSを使う端末ではなく、両手で長時間保持しながら利用する端末として考えても、やはり軽さは大きなメリットとなるでしょう。
みなさんもぜひ、次にスマホを買い換える際は「重さ」に注目してみてください。今自分が使っている端末と比べて重すぎないか、もしくは軽かった場合はどの程度使いやすいと感じられるのか、「使いやすさ」の面から検討してみることをオススメします。
記事執筆:秋吉 健
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