ソースネクストのPOCKETALKはコロナ禍でどのように進化するのか? |
数多くのPCソフトやAI翻訳機「POCKETALK(ポケトーク)」(以下、ポケトーク)などを展開するソースネクストは10日、「ソースネクスト 新製品発表会」を都内で開催し、ポケトークシリーズを対象にしたアップデートの内容や、ポケトークで培った技術を活用した「タブレットmimi(ミミ)」「AutoMemo(オートメモ)」といった新製品を発表した。
今回の発表会は新型コロナウイルス感染症拡大防止対策を実施。発表会場における取材陣の参加人数を抑えるほかにも、オンラインでの同時配信も実施した。
本来であれば今年2020年は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される年であり、ソースネクストも昨年および一昨年の発表会では、高まるインバウンド需要の波に乗る形でポケトークの新製品をリリースしていた。
ソースネクスト初のハードウェア事業として2017年に初代ポケトークを発売。2018年には「POCKETALK W(ポケトーク ダブリュー)」、2019年には「POCKETALK S(ポケトーク エス)」を発売してきた。
国内の翻訳機市場を開拓し、破竹の勢いでトップシェアを奪っていったポケトークだが、今年の新型コロナウイルス感染症拡大によってインバウンド需要が一気に失われた状況で、ソースネクストはどのような戦略を展開しているのだろうか。本記事ではプレゼン内容を中心に発表会全体のレポートをする。
登壇した同社代表取締役社長 松田憲幸氏は、ポケトークの近況としてシリーズ累計出荷台数が80万台を超え、翻訳機市場で圧倒的なシェアを誇っていることをアピールした。
2019年12月9日時点で累計出荷台数が60万台を突破しており、それまでの勢いと比べれば伸び率は鈍化しているようだが、新型コロナウイルス感染症拡大によるインバウンド需要の大幅な低下という状況の中でも、1年弱でおよそ20万台の出荷台数を積み上げてきている。
松田氏は、コロナ禍においてダイヤモンド・プリンセス号をはじめとする新型コロナウイルス感染症対応への緊急支援実施や、アメリカやヨーロッパでは医療機関にポケトークを寄贈してきたことも報告した。
また、コロナ禍におけるポケトークの活用として、個人の利用者に対しては「語学学習」のツールとしての提案をおこなってきたという。
以前から語学学習としてポケトークを利用しているユーザーの割合は多かったが、その傾向も維持されているようで、今年7月に実施したユーザーアンケートでは海外旅行(55%)に次いで語学学習(49%)という結果になり、接客(20.1%)を大きく引き離している。
そんな中、ポケトークシリーズとしては今年7月8日に「ポケトーク S Plus」を、9月24日にTVアニメ「機動戦士ガンダム」とコラボした「ガンダム Edition」を発売した。
ポケトーク S Plusは、従来のポケトーク Sより本体サイズを大型化することで、ディスプレイや内蔵バッテリーも大型化し、見やすくさらに電池持ちがよくなったモデルだ。
ガンダム Editionは、従来のポケトーク Sをベースに本体はもちろんクレードルや充電ケーブル、マニュアル、個装箱に至るまで機動戦士ガンダムの世界観を再現したデザインを採用したコラボモデル。公式オンラインショップ「SOURCENEXTeSHOP」限定、各モデル2000台限定となっている。
そんなポケトークの特長を「高い翻訳精度」「多言語対応」「使いやすさ」「語学学習機能」の4つに分けて説明。松田氏は、今後のアップデートによってさらに機能向上をしていくことを発表し、アップデート内容についても説明した。
・新たにDeepLの翻訳エンジンの採用(11月)
・音声とテキストに翻訳 55言語→58言語(3言語追加)(11月)
・テキストのみに翻訳 20言語→24言語(4言語追加)(11月)
・英語をゆっくり発音できるように(11月)
・電池消費改善(11月)
・翻訳方向補正機能(12月予定)
・ハンズフリー翻訳機能(2021年2月β公開予定)
・発音練習機能の追加(12月予定)
この中で特に注目したいのは「ハンズフリー翻訳機能」だろう。これまでポケトークでは、話し始める前に「必ず」ボタンを押さなければいけなかった。もちろん、語学学習のようにひとりで使う分には大きな問題はないが、言葉が通じない相手と初めてポケトークで話す場合「ボタンを押して合図の音が鳴ってから話し始めてください」ということを相手に事前に伝える必要がある。
そのため、相手にポケトークを渡す前にその説明をポケトークで翻訳して相手に見せる一手間をかけなければいけないめんどうさがあり、それを省くとタイミングが合わなかったり、ボタンを押し忘れたりして、話し始めの翻訳が高い確率で誤翻訳となるめんどうさがあった。
そうしたストレスにつながる部分がハンズフリー翻訳機能に加え翻訳方向補正機能が搭載されることで、かなり軽減されるのではないかと予想される。ハンズフリー翻訳機能については、現状開発段階でありβ版公開を2021年2月に予定している。
同社では、これまでのポケトークで培ってきた技術やテクノロジーを活用した新たなIoT製品を開発・販売していくという。その第1弾製品として今年9月4日にAIボイス筆談機「ポケトークmimi(ミミ)」を発売した。ポケトークmimiの本体は一見するとポケトーク S Plusとほぼ同じだが、日本語で話した言葉を日本語の文字としてディスプレイに表示する製品だ。
日本語のほか英語と中国語にも対応するが、翻訳機能は搭載しておらず、あくまでも話した言葉をその言語のまま文字表示させるというものだ。
仕組みとしてはポケトーク同様、入力した音声をクラウド上のAIが音声認識して、ポケトークmimiのディスプレイで文字表示する。音声入力から文字表示までを機器単体ではせず、一旦クラウドに上げてAIでの認識をすることで通信が必要になる一方で、認識率の向上や新語への対応などが可能になるという。
実は、開発のきっかけはポケトークの利用者だった。ポケトークの利用者が難聴者のコミュニケーションツールとして活用していたのだ。
WHO(世界保健機関)の「World Hearing Day 2018」によると、世界における難聴者の数は2018年で4.66億人とされており、2050年には9億人に達するという。世界的にも難聴者が増える中、新型コロナウイルス感染症拡大によって、多くの人が日常でのマスク着用という生活様式の変化もあり、さらに相手の声が聞こえ難くなるという状況にもなっている。
社会的な課題ではあるものの難聴者や介護者向けのアンケート結果によると、解決策は「大声で話す」という人としての基本的な能力以外、なんのテクノロジーも活用していないことが浮き彫りになった。難聴者・介護者ともに日常のコミュニケーションに不便を感じているという。
聴覚を補うものといえば補聴器だが、補聴器利用者へのアンケートでは、なんらかの不便を感じている人が7割以上存在していることも分かった。
こうした背景もあり、同社ではポケトークmimiに続く製品としてAIボイス筆談機の「タブレットmimi(ミミ)」を開発し、12月4日(金)に発売する。
ポケトークmimiの姉妹品に位置づけられるタブレットmimiは、画面が大きくなることでより見やすく、様々なシーンで活用できるようになっている。AIによる音声認識や文字サイズの変更などはポケトークmimiと同様だが、クレードルを同梱して充電したまま利用できる点や、ハンズフリーによる音声入力が可能となっているため、ポケトークmimiのようにボタンを押して話す必要がない。
そのため、タブレットmimiは電源ボタン以外のボタン類は搭載されておらず「置いて電源を入れればすぐに使える」という超シンプルな設計となっている。
4000台限定で価格は2年間の通信料込みで31,800円(税別)。2年後も継続利用する場合は別途手続きが必要。また、月額2,980円(税別)でのレンタルサービスも提供する予定だ。
ポケトークmimiも、アップデートによりハンズフリーモードを追加する。2021年春頃に提供開始の予定だ。
ポケトークmimiやタブレットmimiのように、AIによる音声認識を経由して文字に起こしていくという仕組みを活用したもうひとつの新製品が発表された。それが、AIボイスレコーダー「AutoMemo(オートメモ)」だ。
AutoMemoは、録音した音声データをクラウドに上げて音声認識・テキスト変換・保存し、スマートフォン(スマホ)の専用アプリおよび指定したメールアドレスに音声とテキストが届くというもの。
AutoMemo本体からクラウドにアップロードするための通信はWi-Fi経由となるため、事前にスマホの専用アプリで利用するWi-Fiを選択する。AutoMemoとスマホはBluetoothで接続する。
主な特長は、キーワードで検索できる点や、テキスト化された文字をタップしてその部分から音声の再生ができる点などがあげられる。
2020年12月4日(金)発売予定で、本体の価格は19,800円(税込)。毎月1時間までの録音データをテキスト化できる「ベーシックプラン」は無料、毎月30時間までの録音データをテキスト化できる「プレミアムプラン」は月額980円(税込)、1回のチャージで10時間分の録音データをテキスト化でき余った時間は翌月以降に繰り越すことができる「10時間チャージ」は1回につき980円(税込)となっている。
なお、発売記念キャンペーンとして2021年6月末までの期間は、プレミアムプランが無料提供される予定のため、期間中は無料で毎月30時間までの録音データをテキスト化できる。
また、時期は来年になるが、AutoMemoで録音したデータでなくても、音声をテキスト化するサービスも開始する予定だ。
松田氏はプレゼンの最後に「What's next?(次は何?)」を提供していく会社にしていきたいと語った。
今回発表された新製品の「タブレットmimi」および「AutoMemo」、また発表会当日の11月10日に発売した空気清浄機「Molekule Air Mini+ (モレキュル エアー ミニ プラス)」については、改めてレビュー記事を掲載する予定だ。
記事執筆:2106bpm(つとむびーぴーえむ)
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