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NTTドコモの新料金プランについて考えてみた! |
NTTドコモは20日、都内にて「今後の料金戦略に関する記者発表会」を開催し、新たな料金体系のとなるデータ容量選択型の低容量データ通信向け料金プラン「irumo(イルモ)」と段階従量制の大容量データ通信向け料金プラン「eximo(エクシモ)」を発表しました。
これまでNTTドコモが展開してきた「ギガホ プレミア(5Gギガホ プレミア)」および「ギガライト(5Gギガライト)」を置き換えることが主な目的であり、さらにドコモショップで取り扱ってきた仮想移動体通信事業者(MVNO)の「OCN モバイル ONE」の価格帯やユーザー層への訴求も視野に入れています。
再編が進むNTTグループの動きに連動したかたちでの料金体系の刷新ですが、これによってユーザーはどこまで恩恵を受けられるのでしょうか。またデメリットはないのでしょうか。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はNTTドコモの新料金体系について考察します。
■旧料金プランと新料金プランを比較した要点
irumoとeximoの詳細についてはそれぞれのリンク先よりご確認頂くとして、分かりやすくこれまでの料金体系と新料金体系の違いの要点をまとめておきます。
・eximoはギガホ プレミアの置き換え
・eximoとギガホ プレミアの大きな違いは「データ通信量1GB未満の料金」の設定程度で最大利用時の料金などは変わらない
・eximoはギガライトの要素もあると勘違いされがちだが、ギガライトの置き換えと考えた場合かなり割高
・ギガライトの料金戦略は実質廃止となりirumoへのプラン変更を促す
・OCNモバイルONEユーザーへの訴求も兼ねた施策だがユーザー層が違うため主目的ではない
これらのポイントを踏まえて細かく解説していきます。
■eximoはhome 5G契約者ならギガホ プレミアからの乗り換えもアリ
はじめにeximoですが、こちらは完全にギガホ プレミアの置き換えとなります。
データ通信量が3GB未満で月額5,665円(割引最大適用時:月額3,278円)、3GB以上は月額7,315円(割引最大適用時:月額4,928円)という料金はまったく変わらず、ここに1GB未満で月額4,565円(割引最大適用時:月額2,178円)という設定が追加されました。
つまり、これまで毎月1GB以上使っていた人には何も変更のない名称が変わっただけのプランであり、わざわざギガホ プレミアからプラン変更するメリットはほぼありません。
ただし、月によっては1GBも使わない場合があるような特殊なユーザーや、新たに追加された割引オプション「home 5G セット割」を適用できるユーザーのみ、プラン変更にメリットが生まれます。
■ギガライトユーザーは全員irumoへプラン変更で問題なし?
ギガホ プレミアの料金体系に段階が追加されたeximoの登場で「ギガライトと統合された」と勘違いされやすいですが、料金を見ればどの容量帯でもギガライトよりも圧倒的に高額であることが分かり、ギガライトの置き換えではないことは明白です。
そこで登場するのがirumoです。0.5GBから9GBまでの4つの料金区分を持つirumoですが、ギガライトの料金とirumoの料金を比較した場合、各容量帯での料金がirumoにすると半額以下になる点が大きなポイントです。
例えばデータ通信量3GB(3GB未満)で比較すると、ギガライトは月額4,565円(割引最大適用時:月額2,728円)、irumoは月額2167円(割引最大適用時:880円)となり、irumoが月額2,398円(割引最大適用時:月額1,848円)も安くなる計算です。
irumoはNTTドコモのキャリアメールが月額330円のオプション扱い(ドコモメールオプション)となっていますが、仮にキャリアメールを追加したとしても月額2,068円(割引最大適用時:月額1,518円)も安くなります。
ギガライトからのプラン変更の場合、どのような条件であっても同容量帯であればirumoが安くなるように設計されているあたりは非常によくできています。
irumoではドコモショップでの各種サポート料金が有料となりますが、キャリアショップでのサポートを毎月頻繁に利用する人などほとんどいません。
原則としてドコモショップでのサポートを受けられないahamoと違い、有料であってもサポートを受けられるirumoでこの価格だからこそ、ギガライトから乗り換える大きなメリットがあります。
ちなみにirumoの9GBの料金は、ギガライトの3GB未満の料金よりも安く設定されています(ドコモメールオプションを適用してわずかに高くなる程度)。つまり、今までギガライトを利用してきた人はほぼ全員irumoで十分なのです。
irumoのもう1つの注意点は、データ使用量0.5GBのプランが「事実上の音声通話専用プラン」である点です。0.5GBプランでは通信速度が送受信ともに最大3Mbpsに制限され、通信ネットワークも4G回線のみとなります。
そもそも通信速度の上限が低いため5Gネットワークを利用するメリットがないため4G回線で不便することはないと考えられますが、しかしデータ容量が0.5GB(500MB)しかなく、しかも3Mbpsという3G時代のような低速回線となるため、基本的に音声通話以外の利用は厳しいと考えるべきでしょう。
他にもirumo全体で留意しておきたい点としては、通信混雑時や大量通信時に他のプランよりも先に帯域制限などが行われる可能性がある点が挙げられます。
これがMVNO並みに帯域制限を掛けるものなのか、それとも若干の速度低下程度で済むものなのかが現状では分かりません。しかしながらMVNOのように回線を借り受けて営業を行う形態ではないため、そこまで厳しい通信状況にはならないと予想しています。
そもそも、これまで月間3GBや7GB未満のデータ通信量で問題がなかった人々の場合、スマホで動画コンテンツなどを常時利用しているとは考えにくいのが実態です。ギガライトユーザーがirumoにプラン変更することで回線安定性で不満を持つことはほぼないのではないかと考えます。
■NTTグループ全体の思惑が見え隠れする新料金体系
今回の新料金体系で最も「割を食う」ユーザーは、恐らく「スマホしか利用していないOCNモバイルONEのユーザー」のみです。
irumoの安さはMVNOユーザー的には「ドコモ光セット割」や「home 5G セット割」を適用した場合にのみ体感できるレベルであり、光回線や5Gホームルーターを利用していないユーザーが敢えて乗り換えるメリットがありません。
逆に、自宅でドコモ光や5Gホームルーターを利用しているなら、回線安定性などでirumoを選択するメリットが生まれる可能性があります。
飽くまでもirumoがターゲットとしているのはギガライトユーザーであり、MVNOからの巻き上げがメインではないという点は十分に留意しておきたいところです。
ギガホ プレミアユーザーはそのままeximoユーザーへとスライドさせ、ギガライトユーザーはより安価でデメリットの少ないirumo(通信速度制限の件のみ実際の通信状況を鑑みる必要あり)、あるいはより容量の大きなahamoへ移行させ、OCNモバイルONEユーザーには光回線や5Gホームルーターの併用を勧めつつirumoへの乗り換えを促しグループ全体での収益力を底上げする。このような戦略が伺えます。
NTTグループはNTTドコモを子会社化して以来、グループ全体の再編や収益力の強化に全力を傾けています。今回の新料金体系もその一環であり、ギガホ プレミアやギガライト、そしてOCNモバイルONEのユーザーまで、幅広く新たな料金体系へと誘導するための「細工」があちこちに散りばめられています。
みなさんはどの料金プランが自分にあったプランだと感じたでしょうか。あるいは新プランのどこに不満を感じたでしょうか。ぜひとも自身の通信料金を再確認し、さらなる節約と最適化を行ってみてください。
記事執筆:秋吉 健
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