iPhone SE(第3世代)について考えてみた! |
既報通り、Appleは8日(現地時間)、オンラインにて新製品発表会「Apple Event - Peek performance.(最高峰を解禁。)」を開催し、同社のスマートフォン(スマホ)「iPhone」シリーズの廉価モデル「iPhone SE」における新機種として「iPhone SE(第3世代)」を発表しました。
すでに紹介しているように同社や量販店のほか、NTTドコモやKDDI、沖縄セルラー電話、ソフトバンク、ウィルコム沖縄、楽天モバイルといった移動体通信事業者(MNO)の各社も取り扱いを発表しており、それぞれ3月11日(金)22時より予約が開始されています。なお、発売日は3月18日(金)を予定しています。
思い起こせば、iPhone SEシリーズも長いもので、初代iPhone SEから数えて7年目となります。当時はiPhoneの価格が年々上昇する中、より安価でライトユースに向いたバリエーションモデルが期待されていた中での発売ということもあり、絶大な支持のもとに大ヒットしたことを記憶しています。
現在でもiPhone SEシリーズは「コスパの良いiPhone」として一定のファン層まで形成しており、その価格から10代の子どもに持たせるファーストスマホとしての需要も大きな市場となっています。
そうした中で今回の新しいiPhone SEであるiPhone SE(第3世代)は「買い」なのでしょうか、それとも「待ち」なのでしょうか。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回はiPhone SE(第3世代)発表を受けて本機の特徴や購入を検討する際に気をつけるべき点などを解説します。
■シリーズ最安。だけど性能は最強クラス
今回のiPhone SE(第3世代)の最大の特徴はやはり「標準モデルのiPhone 13と同じチップセット(SoC)を採用している」という点でしょう。
これまでに発売されてきた歴代のiPhone SEもそうでしたが、廉価モデルと謳いつつもその心臓部は常に最新のSoCを採用し、高いコストパフォーマンスを武器としているのがiPhone SEシリーズです。
iPhone SE(第3世代)に搭載されているSoCは「Apple A15 Bionic」となっており、オンライン発表会のプレゼンで表示されていたSoC画像(CG)を見る限り、標準モデルのiPhone 13シリーズとまったく同じSoCだと考えられます(iPhone 13 Proシリーズ用とはGPUコアの構成数が若干異なる)。
Apple A15 Bionicは数あるスマホ向けSoCの中でも特出して性能が高いことでも有名で、上位モデルの「iPhone 13 Pro」シリーズに搭載されているモデルのグラフィック処理性能は全スマホの中でもトップだと言われています。
iPhone 13やiPhone SE(第3世代)に搭載されているSoCはGPU性能を若干下げられたモデルですが、それでもトータルの処理性能はやはりトップクラス。iPhoneの最廉価モデルが数あるハイエンドスマホと並ぶ性能だというだけでも十分に魅力的です。
■デザインと価格で評価が分かれる
それだけの超高性能を詰め込んだ高コスパモデルなら文句なしの「買い」だろう!と思いがちですが、そこはモデルの違いや廉価版なりの取捨選択が必要な部分も当然あります。
まず気になるのは筐体のデザインおよび機能性です。冒頭でiPhone SEシリーズが登場して7年目になると書きましたが、iPhone SEシリーズは当時から現在に至るまでホームボタンを搭載したデザインが一貫して採用されており、iPhone SE(第3世代)のデザインは前機種となるiPhone SE(第2世代)とほぼ同じ(恐らく変更なし)です。
iPhone SE(第2世代)の時点で2017年に発売された「iPhone 8」のデザインをそのまま流用していたことから、デザインは実質5年以上変わっていないことになります。
さらに言えば、全体的に丸みを帯びたホームボタンありのデザインは2014年発売の「iPhone 6」からで、デザイン的には8年以上代わり映えがしない状況が続いています。
メインストリームやハイエンド向けのiPhoneシリーズは「iPhone 12」世代からデザインが一新されているだけに、さすがに古臭さが否めません。この点を許容できるかどうかが大きなポイントです。
もちろん、ホームボタンの使いやすさや指紋認証機能の使いやすさを優先して、敢えてiPhone 13シリーズではなくiPhone SE(第3世代)を選ぶ、というのは大いにアリです。
iPhone 13シリーズなどの顔認証は今後、iOS 15のアップデートでマスク着用時でも認証可能になるとの情報もありますが、確実な実績のある指紋認証のほうが安心だという人は少なくないようです。
そしてもう1つの懸案は価格です。
iPhone SE(第3世代)の価格はApple直営店などでは64GBモデルが5万7800円(以下すべて税込)、128GBモデルが6万3800円、256GBが7万6800円となっています。
標準モデルであるiPhone 13の公式オンラインストアでの価格が、128GBモデルで9万8800円、256GBモデルで11万800円、512GBモデルで13万4800円であることを考えるなら価格メリットを感じることができますが、ストレージ容量を揃えて計算すると3万4000円~3万5000円の差となり、あまり大きな差ではないようにも感じます。
特に小型のiPhone 13 miniと価格を比較するとその差は2万2000円~2万3000円とさらに縮まってしまいます。小型と言っても画面サイズは5.4インチとiPhone SE(第3世代)よりかなり大きく(画面の横幅はほぼ同じ)、デザイン的な印象も含めて価格分のお得感を感じられるか微妙になるのが難しい点です。
当然、MNO各社が用意する割引施策や残価設定型販売方式を利用することで実質負担額を1~2万円台に抑えることも可能であるため、少しでも安い料金で最新のiPhoneと遜色のない性能を体験したいという人にはうってつけの機種であることは間違いありません。
■場合によってはAndroidスマホのほうが適している人もいる
iPhoneSE(第3世代)の購入を検討する人の中にはAndroidスマホも平行して検討している人もいると思います。その場合、重要になってくるのは性能です。
例えば、処理の重い最新の3Dゲームなどを遊びたい場合、iPhone SE(第3世代)と同価格帯やさらに安いAndroidスマホでは性能不足で快適に楽しめない状況も考えられます。
逆にゲームはあまりしないかライトなゲームしか遊ばず、普段はSNSやネットサーフィン中心の利用であるなら、iPhone SE(第3世代)は無駄な出費になる可能性もあります。
最近では2~3万円台のAndroidスマホでも十分に快適なSNS利用などが楽しめる上、カメラ性能も驚くほど向上しているため、自分がメインとする用途にiPhone SE(第3世代)が適しているのか、よく検討したほうが良いでしょう。
非常に高い性能と使いやすい指紋認証機能を搭載したホームボタンデザインで人気のiPhone SEが第3世代となり、コスパにこだわるiPhoneユーザーにとってはまさに今年が「買い時」です。
一方で代わり映えのしない本体デザインや全画面デザインではない点などに不満を感じるのであれば、上位にあたるiPhone 13 miniなどのほうが満足度は高いかもしれません。2万円弱の価格差も残価設定型販売方式などを活用することで十分に吸収・許容できる価格差です。
Androidスマホとの性能差や価格差も考慮しつつ、快適で楽しいスマホライフが送れる機種を選択できることを願っています。
記事執筆:秋吉 健
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