ポケトーク設立の背景や思いとは?

既報通り、ソースネクストおよび子会社のポケトークは13日、「ソースネクスト新製品、およびポケトーク事業戦略発表会」を都内で開催し、ソースネクストから会議関連製品に特化したブランド「KAIGIO(カイギオ)」の新製品として360度Webカメラ「KAIGIO CAM360(カイギオ カム サンロクマル)」の発売と、ポケトークからAI翻訳機「POCKETALK(ポケトーク)」のスマートフォン(スマホ)など向けアプリ「ポケトークアプリ」の提供開始を発表した。

KAIGIO CAM360は既に販売されており、ポケトークアプリは2022年4月25日(月)から提供開始の予定。ソフトバンクとの業務提携により、ポケトークアプリは25日の提供開始日から携帯電話サービス「SoftBank」および「Y!mobile(ワイモバイル)」においてiPhoneやAndroidのスマホ利用者を対象に月額360円(金額はすべて税込)のアプリ利用料が6カ月無料となるキャンペーンも実施する。

主にパソコン(PC)向けのソフトウェアを展開していたソースネクストが2017年12月に同社初のハードウェア事業として初代「POCKETALK」を発売。その後、2018年に2代目の「POCKETALK W(ポケトーク ダブリュー)」、2019年には「POCKETALK S(ポケトーク エス)」を、さらに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大(コロナ禍)に突入した2020年7月には大画面化した「POCKETALK S Plus(ポケトーク エス プラス)」を発売した。

他にも様々なデザインやTVアニメ「機動戦士ガンダム」とコラボした「ガンダム Edition」、国民的な漫画・アニメ作品「ドラえもん」とコラボした「ドラえもんEdition」といったコラボモデル、さらには東京2020公式ライセンス商品の東京オリンピックおよび東京パラリンピックモデルの発売に加え、POCKETALKで培った技術やノウハウを活用したAIボイス筆談機「ポケトークmimi(ミミ)」や「タブレットmimi(ミミ)」といった派生製品も次々に販売を開始した。

専用機であることの強みを活かし、破竹の勢いで圧倒的なトップシェアを獲得して国内の翻訳機市場を一気に開拓してきたPOCKETALKだが、コロナ禍に突入すると国内のインバウンド需要が激減し、ピンチに直面する。しかし、コロナ禍によってテレワークの拡大など働き方の変化が訪れたことでソースネクストでは、遠隔地とのビデオ会議などにおいて活用できる「ポケトーク字幕」や「グループ翻訳」といった新機能を開発した。

特にポケトーク字幕については、当初は専用機とPCを併用するスタイルだったが、今年1月からは専用機との併用も選択可能なPCソフト版ポケトーク字幕の提供も開始した。このPCソフト版ポケトーク字幕は月額2,200円のサブスクリプションサービスとして提供されているほか、1年版26,400円のパッケージ版も2022年5月13日(金)に発売される予定だ。そして、今回の発表会でスマホなど向けアプリのポケトークアプリの提供開始がついに発表された。

初代POCKETALK発売からおよそ4年半、1周回ってソフトウェアでの提供が本格化することになった。初のハードウェア事業からポケトーク事業に大きく発展する中、企業としても変化をみせている。2021年2月から、それまでソースネクスト代表取締役社長を務めていた松田憲幸氏が会長となり、小嶋智彰氏が社長に就いた。

それから1年、今年2月1日にはソースネクストの子会社として新会社の「ポケトーク株式会社」を設立し、代表取締役社長兼CEOに松田氏が就いた。こうした背景を踏まえ、新会社設立の意図やハードウェア事業として展開してきたPOCKETALKをなぜこのタイミングでアプリをリリースしたのか、その狙いや思いなどについて、13日の発表会の質疑応答で松田氏が自ら語っていたので、その内容をレポートする。

なお、本記事では便宜上、製品を示す場合は「POCKETALK」とアルファベットで表記し、社名を示す場合は「ポケトーク」とカタカナで表記する。

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質疑応答の様子
左からソースネクストCTO/ポケトークCTO 川竹一氏、ソースネクスト代表取締役社長兼COO 小嶋智彰氏、ソースネクスト代表取締役会長兼CEO/ポケトーク代表取締役社長兼CEO 松田憲幸氏

発表会の内容はこちらのレポートをご覧いただき、ここでは質疑応答における松田氏の発言を取り上げていく。

■ポケトーク設立の狙い
まずもっとも気になる点は新会社ポケトークを設立した理由や狙いだ。1996年に「株式会社ソース」として設立され、当初からPCソフトの開発や販売を手がけてきた。PCのハードディスク加速ユーティリティソフト「驚速」シリーズや、タイピングソフト「特打」シリーズ、そしてスマホがまだ普及する前の携帯電話(フィーチャーフォン、ガラケー)の時代には携帯電話のデータ編集ソフトとして「携快電話」を販売していた。

1999年にはそれまで製品のブランド名だったソースネクストに社名を変更。その後も「いきなりPDF」「ウイルスセキュリティZERO」「筆王」などの人気シリーズを次々に販売する。

2012年にはアメリカに子会社「SOURCENEXT Inc.」を設立。2019年にはオランダに子会社「SOURCENEXT B.V.」を設立している。そして、今年2月に国内において子会社となるポケトークを設立した。

ポケトーク設立の狙いについて質問された松田氏は「いくつか要素がある」と断った上で、新会社設立における3つの理由を語った。

まず1つめは「POCKETALKがグローバルな製品に育った」というもの。松田氏は「今、正直アメリカの売り上げが日本の売り上げを上回っています」とPOCKETALKの現状を明かし、海外でも支持されるグローバルな製品であることを実感しているという。

その上で「これだけグローバルになる製品であれば、きっちり資金もグローバルに集めたほうがいい。ソースネクストの中の一部の部門としてポケトークがあるよりも、会社としてあったほうが今後さらに大きくできると思った」と語った。

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質疑応答で記者からの質問に答える松田憲幸氏

2つめは「ビジネスモデルの拡大」だ。前述のように当初POCKETALKはソースネクスト初のハードウェア(IoT機器)事業として始まった。実は、初代POCKETALKはオランダのTravis(トラビス)が開発した製品であり、日本国内での独占販売権を取得して国内展開していた。国内向けにカスタマイズされている部分もあったため共同開発ではあるものの、ベースはTravisの翻訳機を国内で販売するディストリビューター(代理店や卸業者などの意味)であった。

2017年12月15日にアメリカやカナダにおける独占販売権も取得しており、当初より海外での展開も積極的に進めてはいたが、初代POCKETALKにおける製品的な課題も多く、そうした点を解消するべく2018年に発売されたPOCKETALK Wは自社で開発した。

以降のPOCKETALKのラインナップは自社で開発し、毎年のように新モデルをリリースしていたが、コロナ禍が訪れ、その後はソフトウェア開発にも力を入れた。

こうした背景がある中、松田氏はハードウェアだけを売っているだけでは、世界的な規模感のビジネスとして展開していくイメージが低いとし、またポケトーク字幕やポケトークアプリといったサブスクリプションのビジネスモデルも追加したことで、新たな会社を作りしっかりと資金を集めて展開していくためだと説明した。

3つめは「ブランド名」だ。松田氏によるとアメリカなどにおいて、会社名はプロダクト名と一致していることが一般的だという。そのため「我々も『ソースネクストのPOCKETALKです』よりは『ポケトーク株式会社のPOCKETALKです』っていう方がブランドもひとつに絞れて展開しやすい」という。

これら3つの理由で新会社のポケトークを設立したとのことだが、大枠の狙いとしては「POCKETALKをグローバルな製品として本格的に展開するため」というものだろう。

日本国内においては、コロナ禍によってインバウンド需要が一気に消失しただけでなく、未だ入出国には制限がかかっている状態だ。POCKETALKシリーズの累計出荷台数も2021年9月に90万台を突破して以降100万台突破の知らせはなく当初の勢いは感じられない。日本国内でのハードウェアとしてのPOCKETALKは頭打ち状態が続いているのが正直なところだろう。

一方、海外では状況が異なるようだ。松田氏が発表会のプレゼンでも示していたが、前年比の約5倍近くと販売状況が回復してきている。

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アメリカでの販売状況

また、日本と異なり多国籍な人が集まり、多言語でやり取りが多い国や地域では、そもそも翻訳機のニーズも高まる。そうした理由から、日本国内ではニーズが高い国内向け製品を提供しながら、海外での展開も本格化していこうという狙いがあるのではないかと考えるのが自然だろう。

■ポケトークアプリを開発した狙い
専用機としての利点を追求してきたPOCKETALKだが、ここにきてPCソフト版やアプリ版の展開を始めた。リモートワークにおけるWeb会議に便利なポケトーク字幕にはじまり、ついにiOSやAndroid向けのアプリを25日から提供開始する。

翻訳アプリは競合も多く、今さら感も否めないがなぜアプリ版を開発し、このタイミングでリリースしたのだろうか。ここにもやはり「本格的なグローバル展開」の意味合いがある。

質疑応答でポケトークアプリのリリースのタイミングを問われた松田氏は「いくつか理由がある」とした上で、ますグローバル展開について触れた。

POCKETALKは、2年間の通信量がセットで買い切り販売されている。本体内にはeSIMを搭載しており、世界130カ国以上で通信ができる。このグローバル通信により、対応する国や地域であればすぐに利用でき、通信は必要だがクラウドエンジンによる精度の高い翻訳を実現している。

通信をするということは、同じ機器であっても国ごとに認証等をする必要がある。松田氏は「ハードウェアだけですと(展開する)スピードというのはどうしても遅れていく。ひとつひとつの国ごとに、それぞれの法律がありまして。ですが、アプリですと一瞬にグローバルに展開できる」と語った。

一方で、国内展開についても言及した。発表会でも公表したソフトバンクとの業務提携についても触れ「ポケトークを始めてもう4年半近くなっておりますので、その中でソフトバンクさんのような強力なパートナーが見つかり、(SoftbankやY!mobileを)使われているユーザー様にも(ポケトークアプリを)使っていただく機会をいただいたということがひとつ大きなきっかけになったのも事実」と語り、グローバル展開におけるメリットはもちろんだが、国内においてもソフトバンクとの業務提携が実現したことが大きな理由となったようだ。

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発表会で撮影に応じるソフトバンク常務執行役員 菅野圭吾氏と松田氏

翻訳アプリという分野では後発だが、競合に対しての強みを問われた松田氏は、ソフトバンクのバックアップを受けてまずは使ってもらうことから始め「その中でフィードバックをいただきながら、(DL数などの)目標の値をきっちり決めていきたい」とした。

■専用機POCKETALKとポケトークアプリは共存できる
専用機とアプリの共存が可能かを問われた松田氏は「答えとしては共存していくと考えています」と即答した。

松田氏は専用機のメリットとして、
・マイクやスピーカーが良い
・法人利用しやすい
大きくこの2点を挙げた。

アプリ版ではマイクやスピーカーはどうしても所持しているスマホに依存してしまう。声の収音や認識および音声再生の聞き取りやすさが利用するスマホよってまちまちになってしまうが「POCKETALKの場合は音量が大きいということで、マイクも非常にうるさいところでも使えるのが特徴」だと話す。

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歴代のPOCKETALK

法人利用に関しては、複数のメリットを挙げた。

「例えば社員の方々に、あなたの個人のスマホにアプリを入れてくださいっていう訳には今はいけない状況になっていると思うが、会社側としては翻訳のためにわざわざスマホを支給することになる。そうなるとスマホが2年間使い放題で29,800円ていう訳にはいかないため、POCKETALKであれば圧倒的に価格が安くなると」

「もしくはスマホよりもPOCKETALKの方が(用途が)限定されているのでセキュリティ上も安心できる」

「もしくは病院などで即時性が必要な場合、スマートフォンですとまずパスワードロックを解除して、アプリを立ち上げてなどのステップが必要だが、ポケトークの場合は瞬時に対応できる」

と、具体的な例を挙げた上で「かなりの長所がありますので、普通にこの端末(POCKETALK)は残っていく」と断言。一方で「アプリでもいいよっという方もいらっしゃるのは事実ですので、これら両方を提供することで、お互い相乗効果が出ると考えている」と語った。

■今後の展開
新たな製品や展開を発表したばかりだが、質疑応答では早くも今後の展開についての質問も飛んだ。

松田氏は「本当にに様々なものを考えている」とし、今後デバイスの変化や様々なフォームファクタも変わっていくことも想定した上で「我々としてはとにかく『言葉の壁をなくす』ために、全然英語がしゃべれない人と、全然日本語がしゃべれないアメリカ人が普通にしゃべれる世界っていうのを実現していきたいという想いで、ポケトーク株式会社を設立した」「我々の今考えていることはもうほんとに様々。やっていてほんとに不便だなと思うことを(解消して)とにかく形にしていきたいと思っている」と答えた。

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POCKETALKシリーズ


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ミッションは言葉の壁をなくす

当初からミッションとして掲げている「言葉の壁をなくす」を実現するため新会社とともに、今後どのようにPOCKETALKが世界市場に広がりを見せていくのか、また国内市場でもどのように展開していくのか引き続き注目していきたい。


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