久々にモバイルデバイスの進化を感じた年でした!

早いもので、今年も残すところ1週間ばかり。みなさん、年越しの準備は整いましたでしょうか。

筆者は昨年まで若干小休止を頂いていたモバイルガジェット関係のお仕事に今年5月から本格復帰させて頂きました。完全に浦島太郎状態であった関連業界の勉強をし直すための助走期間も含め、何かと忙しい1年だったように思います。

IT業界や携帯電話業界の進歩と進化の波は相変わらず速く、ほんの1~2年前の技術ですら陳腐化していることに改めて驚きます。

そんな知識の入れ替えに合わせ、さらに不足していた経験を補うべく「まずは使ってみなくては!」とさまざまなガジェットに手を出した1年でもありました。

今回はそんな「知識と経験」を補い、新たな世界を見せてくれた素晴らしいモバイルガジェットやモバイルサービスの数々を「年末企画」として総決算したいと思います。


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最先端の知識を手に入れるため、展示会を走り回った年でもありました


■スマートフォン(スマホ)動画撮影の常識を変えた「OSMO mobile」
フリーライターという職業上、そこで用いる道具には常に悩みがあります。最高の道具を揃え、最高の環境で仕事へ全力を出せることが理想ですが、仕事とは利益や収益を上げてこそ意味があるもの。無駄に予算をかけて成り立つものではありません。

また1人で仕事をするため、機材の重量や容量(サイズ)、機動性や汎用性なども重視しないといけない場合は多々あります。その点において、スマホ用3軸ジンバル「OSMO mobile」は素晴らしい体験を与えてくれました。


動画撮影の品質を上げるというのは意外と難しく、大きなビデオカメラを用いてもスムーズで安定した撮影はかなりの技術を要します。しかしこのOSMO mobileはスマホに取り付け撮影アプリを起動するだけ。ガクガクゆらゆらと前後左右に動く手ブレを強力に抑え、まるでTV局の撮影のような見事な動きを実現してくれます。

入力音声がスマホのマイク頼みである点やズーム撮影などを手元のハンドル操作で行えない点などが若干の難点ですが、そこも含めてスマホの周辺機器の可能性や今後の展開への期待感を得られた素晴らしいガジェットだった思います。

もちろん、今後も展示会や各種発表会で活用していきますので動画をお楽しみに。

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楽天モバイルでも取り扱いが開始され、楽天モバイル事業チーフプロダクトオフィサーの黒住吉郎氏も絶賛していた


■思いのほか快適だったMVNOサービス「mineo」
大手の移動体通信事業者(MNO)から仮想移動体通信事業者(MVNO)の利用へと切り替えてみたのも今年の大きなチャレンジでした。

本来であればMNO契約を残しつつMVNOを新たに契約して試すべきだったのかもしれませんが、MNO各社と総務省とのやり取りや年々引き上げられる料金施策に「我慢してまでMNOにこだわる必要はないのではないか?」との疑問から、あえてメイン回線を乗り換えることで消費者視点で通信料金やサービス品質というものについて考えてみた次第です。


結果としては大満足、入念に自分のスマホの使い方をシミュレートしてから契約したおかげで現在も非常に快適に利用できています。わずか3GBの契約にも関わらずデータ通信量は毎月1GB以上余り、mineoの「フリータンク」にはもっぱら預けるばかりですが、その余った分が誰かの助けになっていると思えば悪い気はしません。

市場規模の巨大な通信業界を相手に仕事をしていると何かとサービスの裏が見透けるもので、正直「お金に汚い業界」という印象が拭えませんでしたが、一歩下がってMNOから目を遠ざけてみると、助け合いと支え合いの精神で成り立つMVNOというものの存在があり、そこで草の根的な事業活動を行っている姿を知ることができたのは大きな収穫であったと感じます。

その昔はDDIポケットやその後のウィルコムのPHS事業の魅力に惹かれ応援してきた経緯もある筆者だけに、マス規模のメジャーサービスよりもニッチなサービスに惹かれてしまうのは悲しい性(さが)かもしれません。

mineoでは今後、ユーザー専用の通信帯域を保証した「プレミアムコース」の正式運用なども決定していますので、状況が許す限りレポートなどをお届けしていきたいと思います。

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人の善意が支えるMVNO。そんなものが世の中に1つくらいあっても良いと思う


■今年の大本命。羊の皮を被った「iPhone 7」
iPhone 3G以降のiPhoneシリーズすべてを使い続けてきた筆者にとって「iPhone 7」を手に入れることは当然であって、酷い言い方ですがその行為自体には何ら驚きも感動もありません。しかし今年のiPhoneは一味違いました。

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MVNO利用のためSIMフリー版を購入したのも大きな変化

iPhone 7はこれまでの「無印ナンバーでデザイン変更を伴うモデルチェンジ、s付きナンバーで性能改良によるブラッシュアップ」という流れを変え、外観デザインをiPhone 6やiPhone 6sからほとんど変えずにモデルチェンジをしてきました。

購入するまではその見た目の代わり映えのなさやホームボタンの非物理化などから不安を拭えませんでしたが、実際に触ってみれば動作の軽快さや防水対応、ステレオスピーカーの搭載、カメラの手ブレ補正対応など、細かな部分の改良が積み重なり見事に「まったく使用感覚の違う製品」へ昇華されていました。

ただ、価格の高騰や3D Touch周りの詰めの甘さなど、不満点も少なからずあります。OSや標準アプリの使い勝手の微妙さも相変わらずで、iOS 7以降違和感の残るフラットデザインのユーザーインターフェース(UI)はiOS 10でさらにカード形式の表示が「重なり」、統一感が薄く分かりづらい構造になってしまいました。

非常に完成度が高いハードウェアに詰めの甘さが見えるソフトウェア。長く続くシリーズゆえの新機種開発の難しさやブランドイメージを重視した価格設定など、iPhoneという「スマートフォンの革命児」が抱える問題も浮き彫りにした機種になった気がします。

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イヤホンジャックがなくなったことも大きな波紋を呼んだ


■仕事の質を大きく変えた「ポメラ DM200」
今年最も大きな発見を得られたモバイルガジェットは「ポメラ DM200」です。「デジタルメモ」というジャンル名でシリーズ化されてきたポメラの最新機種ですが、それまでほとんど興味を持つことがなかったポメラが筆者をここまで夢中にさせるとは想像もしていませんでした。


ウェブサイトを見られるでもなく、メーラーとして使えるわけでもなく、ましてや電話もSNSすらもできないただの「電子メモ帳」。そんな代物に4万円も払い、それなら紙のメモ帳でいいじゃないかと笑われそうなところですが、このポメラの作業効率の高さは特筆に値するものがあります。

文字を書くことしかできないからこそ作業に集中でき、没頭できるのです。他に一切の雑念が入ってこないのです。ウェブサイトの情報もTwitterのタイムラインもLINEの通知も来ません。ポメラの画面と向き合った瞬間からできることはただ1つ。文字を書くことのみ。

スマホやPCが万能の道具となり、常に情報とコミュニケーションの氾濫の中で生きる現代にとって、すべてを忘れて何かの作業に没頭するという時間はとても貴重になりつつあります。フリーライターという仕事にとって、その貴重な時間こそが「ものを書く」という時間なのだと改めて気付かせてくれた素晴らしい道具です。

DM200については今後も使用感や機能についてレポートを連載していく予定ですのでお楽しみに。

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ニッチなヒット商品にはそれなりのワケがある


■今年最後に来た革命のアクセサリー「AirPods」
最後にご紹介するのは先日もレビューを行った「AirPods」です。もし今年を代表するモバイルガジェットを1つ挙げろと言われたら、筆者は間違いなくこのAirPodsを挙げるでしょう。

AirPodsがもたらしたものは音楽の質の向上であるとかリスニング環境の改善といったような音楽面での変革ではありません。AirPodsは日常の生活スタイルに変革を与えたのです。


音楽を持ち歩く、という発想は1979年にソニーが発売した「ウォークマン TPS-L2」によって実現され、以来30年近くもの間変わることのないスタイルでした。その歴史の中では記録媒体がCDやMD、シリコンオーディオへと変化したり、ヘッドホンもイヤホンになってさらにカナル型などのバリエーションが生み出されるなど様々な変化がありましたが、基本的な「音楽を持ち歩く」というスタイルにはあまり大きな変革はありませんでした。

しかしAirPodsがもたらしたものは「音楽を身に着ける」という感覚です。「音楽を着る」と言い切ってもいいでしょう。完全にケーブルのないハウジング部のみの形状と高度でシンプルな操作性は、音楽を持ち歩くという「身構えるような感覚」を忘れさせるだけのインパクトがありました。

AirPodsはファッションです。決して音質面で優位があるわけではありません。スマホ全盛の時代に人々がそれでも腕時計を身に付けるように、音楽をファッションとして身に纏うためのアクセサリーなのです。

人はAirPodsを着けている時と着けていない時で何が変わるでしょうか。ほとんど何も変わりません。ただ1つ、音楽を聴いている、という事象以外は。ケーブルが上着の裾や鞄に絡む心配をする必要はなく、スマホを持つたびにケーブルを邪魔そうに避ける仕草もいりません。

現状、AirPodsに欠点がないわけではありません。しかしこれから先、このスタイルがスタンダードになっていく未来は見えます。恐らくカナル型になったりノイズキャンセリングを搭載したり、よりファッション性を高めた同様の機種が登場することでしょう。日々の生活をほんの少し拡張して楽しませてくれる小道具。それがAirPodsだと感じるのです。

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iPhone 7はAirPodsと組み合わせて初めて「完成」される製品だった


■モバイルガジェットで生活や仕事の質を向上させていこう
こうして並べてみると、今年筆者が購入し「これは」と感じたモバイル製品には、どれも生活や仕事を便利に拡張していく傾向があります。

OSMO mobileは仕事の質を向上させ、より観やすく美しい動画撮影を可能にしてくれました。MVNOサービスのmineoは無駄なコストを抑え自分の生活や仕事に最適化したモバイル環境を提供してくれました。iPhone 7とAirPodsの組み合わせは生活の質を向上させてくれました。

時に人は扱いきれないテクノロジーに振り回され、ともすれば無駄な出費や不必要なものに囲まれ、気が付けば生活も仕事も以前より状況が悪くなっていた、などということすらあります。モバイルガジェットを多数愛用しているとそういった状況に陥ることは少なからずあり、これまでもあまり良い思いをしなかった年がかなりありました。

しかし今年は幸いにも非常に良い選択をし続けられた年だったように思います。購入したモバイルガジェットで「これは失敗した」と感じたのは安いノーブランドの卓上スマホスタンドくらいでしょうか。

モバイルガジェットライターとしての勘もまだまだ取り戻せていないように感じます。来年も勉強を重ね、様々な展示会や発表会へ出向き、みなさんに1つでも多くの素晴らしいモバイル製品をご紹介できたらと思います。



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